「2025年の崖」をご存知でしょうか?
2025年以降、日本企業の競争力が崖から転がり落ちるように低下し、大きな経済的損失を生むかもしれないという経済産業省が発表したアラートです。2018年9月に同省が発表したDXレポートによると、2025年以降年間最大12兆円の経済的損失が発生すると言われており、大企業のみならず中小企業や個人事業主、ひいては消費者にとっても影を落とすことになりかねません。
「2025年の崖」回避のカギを握っているのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)です。デジタル技術によって既存のビジネスモデルを変革させることで、レガシーシステムからの早期脱却が期待できます。そんな中、もっともDXが遅れていると言われているのが金融業界です。
目次
◾️金融業界が抱えるDXの課題とは
◾️課題1.レガシーシステムから脱却できない
レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されたシステムのことです。レガシーシステムは新しいシステムとの互換性が低く、変化に対応しづらいという側面があります。
先述のDXレポートによると、日本の全産業の約80%がレガシーシステムを抱えていると回答しており、こと金融業界においては100%の企業が何かしらのレガシーシステムを抱えている現状があります。
金融業界は顧客のお金や資産を管理するといった業務上、信用を得ることが大前提です。ミスは許されず、リスクヘッジを念頭に置くため、ミスが発生するおそれのある「新たな取り組み」には慎重になる傾向にあります。加えて、長い間手を加えていないレガシーシステムは老朽化・ブラックボックス化し、改善やメンテナンスがしづらいため脱却は難しいとされています。
◾️課題2.ビジョンや戦略が立てにくい
デジタルテクノロジーは変化のサイクルが早く、新たな技術が次々に登場しています。今ある技術が数年後には時代遅れとなっている可能性もあり得るでしょう。そういった中で、テクノロジーの変化に柔軟に対応できる体制・基盤を整えておくことが重要です。
また、高齢者はじめITに精通していない顧客も多く、顧客層に向けたワークフローの見直しも重要です。どういったシステムでどんなフローを実現するのかを事前検討し、デジタル活用に向けてしっかりとビジョン・戦略を立てることが大切です。
◾️課題3.IT人材の不足
経済産業省によると、2015年に約14万人不足していたIT人材が、2025年には約43万人不足すると言われています。特に金融業界においては、COBOLやFORTRANといった古いプログラミング言語を使用していた人材の多くが定年・退職を迎えます。そのため、後継者に思想設計やノウハウなどを継承する必要がありますが、ソースコードなど困難を極めるものが多く、引き継ぎが難しいといった問題があります。
また、IT人材の育成も必要です。金融という業務特性を理解したうえでIT技術を扱える人材は短期的には育成しにくく、外部からの獲得も困難です。5年先、10年先のビジョンに向け、要件に対して的確に対応できる人材育成を行う必要があるでしょう。
◾️「コミュニケーションAI」による新たなDX
このように、金融DXにはまだまだ課題がたくさんあります。
しかし、そもそもDXにおける本来あるべき姿は「より良い顧客体験」を提供することではないでしょうか?
煩雑で難しいイメージがある金融サービスを、より簡単に、より適切なタイミングで享受できることが、ユーザーにとってより良い顧客体験につながるのではないかと弊社は考えています。
- リアルな接客がなくても必要な金融サービスを受けられる
- ライフスタイルに合わせて、良きタイミングで金融サービスが手に入る
こういった顧客体験を創造し、ユーザビリティを高めることが大切です。そして、それを可能にするのが「コミュニケーションAI」による金融DXです。
コミュニケーションAIとは、画面上のAIロボットと会話をすることで、情報案内や申請手続きのサポートなどをしてくれるサービスです。以下、主なメリットをご紹介します。
◾️メリット1.ユーザーごとへの最適な情報提案
一般的なチャットボットと違い、会話をすればするほどユーザーを理解していきます。取得した情報は記憶され、次の会話に応用できるので、個々のユーザーへ最適なアプローチができます。こういった精度の高い会話を繰り返すことで、ユーザーは安心感や納得感を抱きやすくなります。
◾️メリット2.長期的な関係構築
AIキャラクターを用いて会話をすることで心理的なハードルを下げ、金融といった固いイメージを軟化させます。また、情報提案やアドバイス以外にも、雑談やエンタメコンテンツを提示することでユーザー体験を向上させ、サービスの継続率アップが期待できます。
◾️メリット3.ユーザー情報の一元管理
取得したユーザー情報は蓄積・分析し、一元管理することができます。ユーザーの年代、性別、目標、生活スタイルといった情報の他、資産状況や投資額なども把握できます。これにより、業務効率のアップや、個々のユーザーへの適切な情報案内が可能になります。
◾️メリット4.導入が簡単
会話作成は、内容を吟味したうえで弊社側で行います。そのため、導入企業側で煩雑な作業などは特に発生せず、導入の手間がかかりません。
◾️メリット5.人的コストがかからない
コミュニケーションAIは自動化システムのため、基本的に運用において人手の必要がありません。DXを検討するうえで、人手不足やIT人材の確保にお悩みの場合でも大丈夫です。
◾️コミュニケーションAIの活用イメージ
これらのメリットを生かし、コミュニケーションAIでは主にこういった活用方法をイメージしています。
◾️活用イメージ1.銀行
- 消費活動の改善支援
- 貯金目標の設定、サポート
- 顧客の属性に合わせた情報発信
銀行に導入した場合、ユーザー属性を取得したうえで個々に最適なアドバイスをしていきます。たとえば、支出額を分析してお金の使い方を提案したり、継続して貯金ができるよう応援したり、ユーザーに必要な情報を適切なタイミングで提案したりと、幅広い視点でユーザーの生活を支援します。
◾️活用イメージ2.証券会社
- (例:リテール営業サポートの場合)
- 効率的な属性情報の取得
- 担当顧客の情報の一元管理
- 顧客の属性に合わせた情報発信
証券会社への導入においても効果が見込めます。たとえばリテール営業などの場合、ユーザーの状況や意図を会話によって把握し、それに見合った商品提案をすることでユーザビリティを向上させます。精度の高い情報提案はユーザーからの信頼も獲得でき、長期的な利用につながります。また、ユーザーごとの情報を一元管理することで業務効率が上がり、営業担当者の負担軽減にもなります。
◾️導入事例:住信SBIネット銀行 貯金アプリ「パルトネ」
実際にコミュニケーションAIを導入いただいたのが、住信SBIネット銀行様の貯金アプリ「パルトネ」です。
若年層をメインターゲットに、AIアシスタントがユーザーに貯金アドバイスをするアプリで、パーソナライズ化された会話によって個々の状況に合わせた貯金のサポートを行います。
- ゲーミフィケーションを取り入れた貯金サポート
- 口座残高確認の習慣化
- 口座開設していなくても利用可能
- 顧客の生活パターン、価値観等のマーケティング
こういった特徴を生かし、継続率や口座開設率、貯金目標達成率などに大きな効果を上げています。その他、詳しい導入効果についてはぜひお問い合わせください。
◾️DXで顧客体験を向上させよう
DXへの課題が多い金融業界ですが、DXに力を入れている企業もあります。
三井住友銀行は、「お客さまの声分析ソリューション」というDXで、年間35.000件に及ぶユーザーの声をAIによって分析・処理し、業務効率化を図っています。また肥後銀行(熊本県の地方銀行)では、フロアの案内係がタブレットを持ち、重複する書類での申請手続きをタブレット入力で一元化し、カウンター窓口でのやりとりをスムーズにしています。
DXにより、今後も様々な変化がもたらされるでしょう。商品の本質的な価値自体は変わらないものの、「顧客体験」が変わることでより多くの人に商品を訴求し、売上につながっていくのではないでしょうか。
弊社はこれからも、コミュニケーションAIを活用してユーザーを捉え、最適な情報提案をしていきます。コミュニケーションAIを使った金融DXをお考えの方、もしくは資料ダウンロードをご希望の方はぜひお気軽にお問い合わせください。
<参考資料>
株式会社システムインテグレータ
【「2025年の崖」とは?問題と対策をわかりやすく解説】
営業ラボ
【「金融業界向け」DXの現状と今後の求められる展開は?】
Techro
【銀行など金融業界の課題とデジタルトランスフォーメーションの活用法3つ】
accenture
【2020年の金融テクノロジーを占う ~2025年の崖を越えるラストチャンス】
デトロイト トーマツ グループ パートナー 早竹裕士
【金融機関の「DXの目詰まり」を解消する課題別アプローチ】
SELFのライターを中心に構成されているチーム。対話型エンジン「コミュニケーションAI」の導入によるメリットをはじめ、各業界における弊社サービスの活用事例などを紹介している。その他、SELFで一緒に働いてくれる仲間を随時募集中。