目次
◆金融教育とは?
近年、金融教育への注目が高まっています。金融庁は2022年8月末にまとめた金融行政方針の中で、これまで民間金融機関などが進めてきた金融教育を国家戦略として推進するよう提言しました。
◆何故いま金融教育?
日本政府は2001年から20年以上に渡り国民へ向け「貯蓄から投資へ」という方針を掲げてきましたが、2022年の調査でも日本の家計の⾦融資産の過半を預貯金が占めており、資産の伸びも欧米に比べて低い⽔準が続いています。
日本で投資が進まない背景には、日本人特有の安定志向のほか、金融リテラシーの低さが指摘されています。預貯金だけで安定した資産形成が可能だった高金利時代が過ぎ去った今、個々人が自らのライフプランやニーズに応じて資産形成していくためには、世代を問わず⾦融経済に関する知識と正しい判断力を培うことが重要とされています。
◆成人年齢の引き下げ
また2022年4月からは成人年齢が18歳に引き下げられ、高校生であっても親の同意なくクレジットカードを作ったり、高額商品をローンで購入するといった契約を行うことができるようになりました。こういった取引におけるトラブル防止などの観点からも18歳までに一定の金融リテラシーを身につける必要があるとして、金融教育を求める声はより一層大きくなりました。
◆金融教育のための取り組み
◆高校授業での金融教育の拡充
2022 年4月から高校の学習指導要領が改訂され、⾦融経済教育の内容が拡充されました。
家庭科の中で「生活における経済の計画」という項目が設けられ、これまで学校教育の中で触れられてこなかった「資産形成」について理解を深めるための内容が盛り込まれています。
◆小学生向けコンテンツ「うんこお金ドリル」
金融庁が2021 年3月に公表した「うんこお⾦ドリル」は、小学生の子供を含む全年齢対象の金融教育コンテンツです。小学生の子供たちが日常生活で経験しそうなお⾦にまつわる出来事を取り上げており、商売や経済の仕組みについて基礎的な部分から学べる構成となっています。
Webサイト上で閲覧できるコンテンツのほか、無料で送付される冊子には申し込みが殺到し、一時的に受付が停止されるという事態になりました。
◆民間企業による取り組み
上記のような行政による取り組みのほか、民間企業でも様々な取り組みが行われています。
たとえば、みずほ銀行では職場体験の受け入れや学校の金融教育の授業に社員を派遣する「出張授業」を行っています。同様の取り組みは他の大手銀行や証券会社も行っています。また、生命保険業界でも、各社が中学生~大学生を対象としたコンテンツを多数用意しており、生命保険協会のウェブサイトでコンテンツの一覧を見ることができるようになっています。
◆金融教育の課題
こうして官民が連携して進められている金融教育への取り組みですが、課題も多く指摘されています。
◆教える側のリテラシー
学校での金融教育については、まだ具体的なカリキュラムが標準化されていないため、学校側は独自の金融教育を実施する必要があります。授業の中でどのような点に重点を置き、どのようにして生徒の学習意欲を促進するかなどは現場の教員が判断して進めることになるため、授業を行う教員の知識量や能力によって学習効果に差が生じるのではないかという懸念があります。
◆学習意欲の継続
「金融」「経済」「資産形成」と聞くと、大人でも難しいと感じる人が多くいます。
漠然とした仕組みは理解していても、いざ詳しく学ぶとなると覚えなくてはならない専門用語がたくさんあり、わからない言葉をインターネットで検索するうちにさらにわからない単語が増えていく、といった困難な状況にも陥りがちです。
また、金融経済についての必要な知識はライフステージとともに変化していくため、新しい用語や金融商品、法律などの学習を生涯を通して継続させる必要があります。こういった難解でゴールのない学習過程は多くの人にとって大きなストレスとなるため、どうやって学習意欲を継続させるかは大きな課題といえるでしょう。
◆学習内容の個別化
学習においてモチベーションを維持するために重要なことは、その知識や情報が自分の生活や人生に必要なものであると認識する「自分ごと化」です。しかし、必要となる金融経済の知識や情報というものは、家計の収支状況やライフステージ、ライフプランによって千差万別。一人の教員が複数の生徒を相手にするいわゆる「教室授業」や不特定多数に向けて一律の情報を発信するコンテンツでは、何が自分にとって必要な情報なのか、自分の生活や人生にどう活かすことができるのか、といったことまでは学ぶことが難しいかもしれません。
金融経済の知識を自分の生活と結びつけて考える「自分ごと化」には、学ぶ側の状況や能力に応じて指導内容を柔軟に変えていける個別指導が有効と考えられます。
◆コミュニケーションAIを活用した金融教育
このような金融教育における課題を解決するために、弊社(SELF株式会社)から対話AIを活用した全世代向けの金融教育コンテンツを提案いたします。
弊社の提供するコミュニケーションAIはその名の通り、ユーザーとコミュニケーションをとることで様々な課題解決を目指すソリューションです。その活用分野は多岐にわたり、金融系サービスや教育・学習系コンテンツにも導入され、効果をあげています。
SELFの導入実績については、下記の記事をご参照ください。
◆自動対話学習の強み
SELFのAIは、ユーザー個人から得た情報をもとに自動会話を展開し、納得感のあるフィードバックや情報提供を行うことができます。これにより、ユーザーの学習へのモチベーションを高めたり、ユーザーが今もっとも必要としている情報を提案することができるのです。
たとえばユーザーの金融リテラシーのレベルに応じて説明の手順や内容を変えたり、ユーザーのライフステージに適した金融商品を紹介する、といったことが可能です。
ここからは、具体的なサービスイメージを提案します。
◆【CASE.1】金融教育×家計簿アプリ
多岐にわたる金融経済の知識を効率的に身につけるには、自分の生活や人生と結びつけて考えられる「自分ごと化」が重要です。近年、金融教育への需要が高まっているのは事実ですが、それは金融経済の専門家を目指す人が増えているからではありません。社会に広がった経済に対する慢性的な不安感の中で、自分や自分の家族の生活や人生を守るために、知識を必要としている人が増えているのです。つまり、多くの人が必要としているのは「金融経済に関する幅広い知識」ではなく、「自らの生活を安定させ、将来への不安を払拭するための知識や情報」です。
たとえば、個人の生活に直結する「家計」を管理する家計簿アプリにAIによる対話学習を組み込んだコンテンツがあれば、ユーザーが高いモチベーションを維持したまま必要な知識を効率的に身につけることができるのではないでしょうか。
◆データを基に金融商品や学習コンテンツを提案
SELFのAIは、会話で取得したユーザー情報や入力された家計データを分析し、様々なアドバイスや提案を行うことができます。
・ユーザーの無駄遣いを指摘して浪費を防止
・ユーザーの節約・貯蓄の目標達成をサポート
・個別のユーザーに適した金融商品やサービスを提案
こういったサポートを、対話を通して行うことで、ユーザーは大きなストレスを感じることなく必要な知識を自然と身につけていくことができます。
◆ユーザーのモチベーション維持をサポート
金融経済について、必要な知識を得ていざ資産運用を始めようと思っても、それに伴う手続きの煩雑さによって挫折してしまう人も少なからずいるはずです。SELFのAIは会話によって、わかりにくい専門用語を噛み砕いて説明したり、手続きの流れをステップごとにわかりやすく案内することができます。
また、会話による情緒的なサポートができる点もSELFの特徴のひとつです。ユーザーの個人的な目標に応じて励ましや応援の言葉を投げかけることで、ユーザーのモチベーションを維持します。
◆【CASE.2】金融教育×ゲーミフィケーション
国が金融教育を国家戦略にすると決めたところで、小学生や思春期の子供たちにその重要性は理解し難いものかもしれません。子供たちの多くが保護者の収入の中で暮らしており、彼らにとっては「金融」や「経済」は今すぐに考えなくてはならない事柄ではないからです。それよりも、自分にとって身近な友達との関係、恋愛、学校生活、ゲームなどのエンタメといった関心事に夢中になってしまうのは無理もないことです。金融経済の知識が将来必要になるとわかってはいても、目の前の生活とは直結しない以上、なかなか積極的に「学びたい!」とはならないでしょう。
◆ゲーム感覚で「金融経済」を学ぶ
では、子供たちが関心を持ちやすいゲームに、金融教育の要素を組み合わせるのはどうでしょう。実は、金融教育の要素を取り入れたゲームは何十年も前から存在しています。不動産取引などを繰り返して資産を増加させていく「モノポリー」やプレイヤーの収支状況が勝敗に影響する「人生ゲーム」は多くの人が一度は遊んだことがあるのではないでしょうか。
最近ではスマホアプリやWebコンテンツでも金融教育につながるゲームコンテンツもいくつかありますが、そこにSELFのAIを導入することで、ゲームキャラクターと会話ができるという魅力がプラスされます。
◆キャラクターとの会話を楽しみながら、自然と知識が身につく
投資の仕組みなどを学ぶ上で、最も効果的な方法は「体験してみる」ことだと言われています。そのため、多くの証券会社では実際に投資を始める前に仮想の資産運用が体験できるシミュレーターなどが用意されています。こういったシミュレーションにキャラクターとの会話を楽しむゲームの要素を組み合わせることで、「金融」や「経済」にあまり興味のない若年層でも、より気軽に金融経済についての知識を身につけることができるのではないでしょうか。
◆ゲームの結果でキャラクターとの関係性が変化
SELFのAIは、ユーザーごとのデータによって出力される会話内容が変化します。たとえばゲーム内での資産状況に応じてキャラクターとの親密度が増減したり、AIが記憶している(会話に利用する)ユーザー情報の種類を制限したりすることもできます。キャラクターと会話内容の設定次第で、ペットの育成ゲームから恋愛シミュレーションゲームまで、様々なターゲットに合わせたエンタメ性を演出することができます。
◆個人に「寄り添う」ことの大切さ
近年、新型コロナウイルスの流行、緊迫した国際情勢、円安の進行、少子高齢化による社会保障問題などを受け、人々が抱える経済への不安は社会全体に広がっているといえるでしょう。しかし実際のところ、現在行われている学校での授業や不特定多数に向けた情報発信だけでは、全ての人に十分な金融教育が行き届くとは思えません。なぜなら、金融経済に関わる有益な情報は社会情勢によって日々変動し、また個人のライフステージやライフプランによっても必要とされる知識は違ってくるからです。だからこそ、効果的な金融教育の実施には学ぶ相手の状況や事情に寄り添った個別指導が必要と考えられます。
それを人の手で行うのが「ファイナンシャルプランナー」と呼ばれる専門家なわけですが、当然、生身の人間のリソースには限りがあります。全世代に向けて広く金融教育を行うには、インターネットなど誰もが気軽に利用できる環境で、なおかつユーザー個人に寄り添うことのできるシステムを用いたサービスが必要とされているのではないでしょうか。
(金融業界のDXについてはこちらの記事もご覧ください)
〈引用・参考資料〉
金融庁
2022事務年度 金融行政方針
日本銀行調査統計局
資金循環の日米欧比較
うんこ学園
金融庁×うんこドリル うんこお金ドリル
農林金融 2006.4
金融教育の現状と課題ーー金融機関が取り組む意義ーー
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