目次
◇スマートシティとは
スマートシティとは2000年ごろから注目を集めはじめた考えで、「ICTやAIなどの技術革新による街づくり」を指し、先進各国を中心に世界的に推進されている取り組みです。
国土交通省ではスマートシティを「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義づけ、日本でも都道府県や市区町村レベルで様々な取り組みが行われています。また、国や自治体だけでなくアメリカのGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)や中国のAlibaba、日本のトヨタ自動車などの大手民間企業もスマートシティの取り組みを進めています。
ただ、実際の導入には住民との連携など課題も多く、ほとんどの取り組みが実証実験段階に留まっているのが現状です。
◾️スーパーシティ構想
スマートシティと同じ場面でよく目にする言葉に「スーパーシティ構想」があります。混同されることも多い2つの用語ですが、厳密にはその意味合いに違いがあります。スマートシティが世界的に推進される取り組みであるのに対し、スーパーシティ構想は日本におけるプロジェクト名です。こういった独自の呼び名はシンガポールでは「スマートネーション」、ドバイでは「スマートドバイ」など国によって存在します。
また、日本においてはスマートシティが技術先行型の街づくりを指すのに対し、スーパーシティ構想は住民の課題解決という目的先行型の取り組みを指す、という違いもあるようです。
◾️デジタル田園都市構想
デジタル田園都市構想は、2021年、岸田文雄内閣総理大臣の下発表された「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されずすべての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」という構想です。
具体的にはスーパーシティ、スマートシティ、MaaS、スマートヘルス、防災、スマート農業、行政のDXなど、それぞれの地域の実情に合わせて、官民連携してサービスの構築を進める、とされています。
◇各国のスマートシティ事例
◾️オランダ・アムステルダム
アムステルダムでは、世界の都市に先行し2009年6月に「アムステルダム・スマートシティ・プログラム(ASC)」を立ち上げ、スマートシティ化のためのプロジェクトを始めました。「持続可能なモビリティや公共空間、オフィスなどの構築」をテーマに地域住民、政府、教育研究機関、企業がスピーディーに連携し、開始からたった1年でパイロットプロジェクトを20も実施しています。
◾️中国・杭州市
中国では地域の国内大手企業と連携し、経済特区や新区、開発区で集中したスマートシティ開発を行うスタイルが主流です。例えば、浙江省杭州市では、大手EC企業「Alibaba」と提携し、交通問題の解決に取り組んでいます。
市内に設置されている1700台のカメラの映像や、公共交通機関の運行情報、インターネット上の地図サービスやナビサービスを「Alibaba Cloud」に集約し、交通渋滞の緩和や交通事故の削減を進めています。
◾️シンガポール
シンガポールは、2014年に「スマートネーション」構想を発表しました。その後、複数の都市で国民デジタル認証、電子決済基盤構築、センサーネットワーク構築、交通機関のスマート化、公共サービスの横断的利用、行政の電子化(デジタル・ガバメント)といった取り組みが進められています。
◇日本における取り組み
◾️大阪府:スマートシティ戦略
大阪府では「大阪スマートシティ戦略Ver.1.0 e-OSAKAをめざして」を策定し、2025年に開催される大阪・関西万博までに実現する取り組みを進めています。
また、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、ICTによる感染拡大抑止を目的とした「大阪コロナ追跡システム」のアプリケーションをリリースしたり、企業広告を表示することで、利用者にポイントが貯まる「大阪マイル」のサービスを導入しています。
◾️東京都港区:Smart City Takeshiba
Smart City Takeshibaは、国家戦略特区に指定された竹芝エリアを中心に、都市型スマートシティの実証を行っています。特定のビル内のあらゆるデータを収集・活用する「スマートビル構想」に始まり、今後は竹芝地区にソリューションを拡大、他都市と連携していく予定となっています。
◾️静岡県裾野市:トヨタ自動車による「ウーブン・シティ」
自治体ではなく民間企業が中心となって進められているスマートシティもあります。
日本の静岡県裾野市で2021年2月に着工された、トヨタ自動車が開発を主導する実証都市「ウーブン・シティ」は、数あるスマートシティ構想の中でも注目を集めています。
自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム、人工知能(AI)など、暮らしを支えるあらゆる技術について、サービスの開発と実証を行い、新たな価値やビジネスモデルを見出すことを目的とし、世界の最先端レベルの技術が集結すると期待されています。
◇スマートシティ実現への課題
ここまでに紹介した他にも、先進各国ではスマートシティ化への取り組みが数多く進められています。しかし、前述した通り、スマートシティの取り組みは現状ほとんどが実証実験段階であり、事業化など実際の導入には至っていません。持続可能なスマートシティの実現には、いくつもの課題があると言われています。
◾️スマートシティ導入への壁
①プライバシーの問題
スマートシティの目指す高度な公共サービスの提供や情報のパーソナライズ化には、その地域内に存在する企業や住民のデータを都市OSと連携することが必要不可欠であり、その中には個人を特定できる「個人情報」も含まれています。そういったデータの集約は監視社会に繋がると問題視する声が上がっています。また、一部の大手企業や自治体がそういったデータを独占・利用することを問題視する声もあります。
②事故やサイバー攻撃のリスク
スマートシティ化によって、街のあらゆるシステムがICTによる連携を行えば、インフラの不具合が生じたり、サイバー攻撃などを受けた際に都市機能が一気に麻痺するという懸念もあります。当然、データ流出などの恐れもあり、より安全性の高いセキュリティの構築が求められることになります。交通システムに障害が及ぶことで、人命に関わる事故などより重大な事態が生じることも考慮しなければなりません。
③恩恵を受けられる人が限られる可能性
世界の人々の価値観が多様化し、地球温暖化や人口爆発、格差など様々な社会問題が顕在化したことで、すべての人が同じかたちの豊かさ、幸せを追求することは難しくなってきています。そもそも、都市には子供から高齢者まで様々な年齢、様々な性別、外国人や障碍者など多種多様な人々が暮らしています。いかに高度なシステムを構築したとしても、その恩恵を受けられるのが一部の住民だけだとしたら、スマートシティ化に多くの住民の合意を得ることは難しいかもしれません。
日本政府が掲げるデジタル田園都市構想は「すべての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」ことを標榜してはいますが、それを実現するためには膨大な時間と資金投資が必要になることでしょう。
◇コミュニケーションAIで課題解決
前述したように、スマートシティを実現させるためには諸々の課題をクリアできる高度な安全性を持った都市OSの開発と、住民の合意と連携が必要になります。同時に、都市に暮らすすべての人が恩恵を受けるためには高度な情報取得とパーソナライズされたサービス提供を可能とするシステムが必要となります。つまりは、都市OSと住民の間をスムーズに橋渡しする何らかのシステムが必要なのです。
◾️コミュニケーションAIを活用するメリット
その課題を解決しうる可能性の一つとして「コミュニケーションAI」の活用があります。
コミュニケーションAIとは、ユーザーと対話することによってユーザー情報を取得し、ひとりひとりにパーソナライズされた情報を提案するAIで、まさに「人とシステムの橋渡し」を可能にする存在です。スマートシティ実現の課題を解決するために、コミュニケーションAIを利用するメリットはいくつもあります。
メリット①:多様な情報を取得できる
コミュニケーションAIは、言語による「会話」によってユーザーにアプローチします。そのため、他のシステムが自動的に記録した定量的なデータからでは測ることのできないユーザーの気分や思考、価値観などの「定性的なデータ」を得ることができます。
そういったデータは、住所氏名や顔画像、キャッシュレス決済履歴のような「個人を特定できるデータ」ではありません。だからこそ取得に際して心理的安全性が高く、ユーザーは安心して情報を提供することができます。
メリット②:提供するサービスの高度なパーソナライズが可能
コミュニケーションAIが「会話」によって取得する情報は「ユーザーの今の状態や思考」をダイレクトに反映したものであるため、提供するサービスの高度なパーソナライズが可能になります。スマートシティにおいては、住民ひとりひとりが「今なにを考え、何を求めているのか」を把握して、必要な情報やサービスを提供することが可能となります。多種多様な住民を定量的な観点だけでなく定性的に理解できる存在、それがコミュニケーションAIなのです。
メリット③:長期的な信頼関係の構築が可能
コミュニケーションAIはユーザーひとりひとりを個別に把握し、個別にアプローチすることができます。多種多様なユーザー情報を蓄積させ、精度の高い提案を行うことができるので、利用すればするほどユーザーにとっての「理解者」になることができるのです。
スマートシティは、原則的に「持続可能な街づくり」が前提となっており、そのためには住民との長期にわたる信頼関係は必要不可欠です。都市に暮らす大勢の住民と信頼関係を築き、持続させるために、コミュニケーションAIの利用は非常に理に適っていると言えます。
◇コミュニケーションが「未来都市」を作る
近年のICTやAI技術の進歩には目を見張るものがあります。それらを活用することで、かつては漫画や映画の中にしか存在しなかった「未来都市」を実現することも決して夢物語ではないでしょう。
しかし、どれほど技術が進歩しようと、その技術を扱う「人間」が劇的に進化するわけではありません。今も昔もこれからも、人は常に様々な感情や思考を持ち、それによって行動を決定することでしょう。スマートシティのシステムが住民のそういったニーズを把握するには、より高度に自動化されたコミュニケーションの手段が必要不可欠です。
弊社(SELF株式会社)の提供するコミュニケーションAIはすでに地域の情報サイトや観光サイトに導入され、多くのユーザーにご利用いただいています。
こういった地域のシステムとユーザーをつなぐコミュニケーションAIのノウハウは、これからさらに活発になるであろうスマートシティの実現にも必ず貢献できると確信しています。
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〈参考資料〉
【内閣府ホームページ スマートシティ】
【ビジネス+IT 「デジタル田園都市国家構想」とは何か? 岸田内閣「5.7兆円」施策の全体像】
【JTB法人サービスサイト 自治体・行政機関向けWEBマガジン「#Think Trunk」】
【TYOTA WOVEN CITY ホームページ】
SELFのライターを中心に構成されているチーム。対話型エンジン「コミュニケーションAI」の導入によるメリットをはじめ、各業界における弊社サービスの活用事例などを紹介している。その他、SELFで一緒に働いてくれる仲間を随時募集中。