目次
◾️顧客ID統合の背景にある「顧客の囲い込み」
近年、先進国を中心に人口が減少しています。
ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)によると、「世界の人口は50年後に縮小する」と見られており、日本においても、2010年に約1億2800万人いた人口が2060年には約8600万人になると予測されています。(上図)
一方、世の中のサービスやコンテンツはますます多様化し、技術の進歩と共に各企業の競争は激化しています。資本主義社会の中で企業が右肩上がりの成長を描くためには、他のサービスへの流出を防ぎ、企業グループ内でサービス回遊を増やす「顧客の囲い込み」が重要です。
ここで必要になるのが顧客IDの統合(=共通ID)です。
グループ内で共通の顧客IDを作り、事業やサービスごとに行っていた顧客管理をすべて一元管理することで、ユーザー側・企業側ともに様々なメリットが生まれます。
◾️IDを共通化するメリット
◾️メリット1.ユーザビリティの向上
顧客IDの統合により、IDひとつで様々なサービスを横断的に利用できる点はユーザーメリットの一つです。
たとえばポイントを使ってネットショッピングをする場合、AサイトとBサイトで別々のIDを使用していれば、基本的にそれぞれのサイトでしかポイントは使えません。しかし共通化されたIDであれば、両方のサイトでポイントが使える他、片方のサイトでの購入履歴が別サイトにも反映されて関連商品をレコメンドされるなど、ユーザビリティの向上が期待できます。
◾️メリット2.業務効率化
企業(自治体)側においても、IDを統合することで業務効率化が期待できます。
たとえば、企業によっては抱えるブランド(商品・サービス)数が百以上に上り、かつそのブランドごとにいくつもチャネルを持っているケースがあります。顧客接点が多いほど、それらを別々に管理するには労力とコストがかかるでしょう。しかし、一元化すれば顧客データ(購入履歴や問い合わせ履歴など)の把握が容易になり、顧客理解を深めることができます。
◾️メリット3.顧客分析・アプローチがしやすい
さらに、顧客理解を深めることは、マーケティング施策の立案や商品開発などに役立ちます。
顧客の行動履歴に基づき、提案内容やタイミング、期間などをコントロールでき、顧客に向けてより的確なアプローチが可能です。それによってユーザーからの信頼を獲得し、リピーターを増やすことができれば顧客の囲い込みにつながります。
◾️顧客ID統合の事例とは
顧客IDを統合する取り組みは、すでにいくつかの企業などで行われています。
◾️事例1.楽天グループ「楽天ID」
世界で約14億のグループ会員を有している楽天グループは、顧客IDの統合にいち早く取り組んでいます。オンライン決済サービスの「楽天ペイ」や、実店舗でも使える「楽天スーパーポイント」など、オンライン・オフライン問わずひとつの楽天IDであらゆる会員サービスを提供しています。さらに、楽天IDに基づく様々なチャネルやデータを活用した「RMP – Go! Spot」というサービスでは、位置情報を活用した広告配信を行い、ユーザーの行動を把握して店舗送客を図る「O2Oマーケティング」の向上に役立てています。
◾️事例2.JR東日本「JREポイント」
JR東日本では、自社グループ共通ポイントサービス「JREポイント」を展開しています。Suicaやビューカード、駅ビルなどで使えるポイントを一元化し、ポイント活用による利用者の囲い込みに力を入れています。また、貯めたポイントを新幹線や在来線のチケットと交換できるサービスもあり、グループ内でのサービス利用を増やすことに成功しています。
◾️事例3.インド政府「インディア・スタック」(※eKYC)
海外の事例としては、インド政府の「インディア・スタック」というAPIが、eKYC(=electronic Know Your Customer)」により公的な個人識別番号と官民サービスをつないでいます。eKYCとはオンライン上で本人確認を完結させる技術のことで、主に銀行の口座開設やクレジットカード登録などに導入されています。インドではeKYCが本人確認や送金等の基幹インフラとなっており、一度発行した共通IDをグループ内の複数のサービスで使うことで利便性の向上が期待できます。
◾️課題は「マーケティング人材の不足」
顧客IDを統合することによるメリットがある一方で、企業側においては課題もあります。
それは、収集した顧客データを分析し、その後のマーケティング施策を考えることのできる人材の不足です。
ある調査では、9割以上の人が自社のマーケティング人材の不足を感じているといった結果が出ています(上図)。たとえばMAツールを活用する場合、ターゲット戦略やシナリオ設定、顧客分析といった戦略設計が重要です。しかし、自社に分析・検討する人材がいないために、的確な戦略が立てられなかったり、分析作業自体業者任せになってしまいます。
たとえデータが揃っていても、それを分析・検討して次のステップにつなげることができなければ効果的な戦略は立てられません。IDを共通化するだけでなく、データを元に顧客に対してどのようなアプローチをするかといった顧客アクションにつなげてこそ、顧客IDの統合によるメリットを最大化できるのではないでしょうか。
◾️顧客理解→顧客アクションまでを自動化する「パーソナルAI」
そこで弊社が提案したいのは、顧客データを取得・分析し、パーソナライズ化された提案までを自動で行うシステム「パーソナルAI」です。
企業の持っている顧客IDと連携させることで、個々のニーズにマッチしたアプローチを自動で行い、また多様な顧客データを拡充することができます。このアプローチと拡充のサイクルを繰り返すことで、自社でしか得られない独自の顧客データが蓄積し、唯一無二の提案プラットフォームが完成するのです。
一体どういうことなのか、パーソナルAIの強みである「コミュニケーション技術」「サービス情報の取得・応用」の2つに絡めてご説明します。
◾️強み1.コミュニケーション技術
パーソナルAIは、弊社独自のアルゴリズムによりユーザー情報を会話によって体系的に取得・記憶します。
一般的なチャットボットのような自然言語処理や情報ライブラリからの検索ではなく、対話によって情報が積み重なっていくため、まるで人間と会話をしているかのような自然なコミュニケーションを実現します。属性情報をはじめ日々の体調、趣味趣向、生活スタイル、忙しさといった様々な要素を取得し、ユーザーを高い解像度で把握していきます。ユーザーを知れば知るほど提案の精度が上がり、カテゴリをまたいだ幅広いアプローチが可能になります。
●旅行サービスの場合:「結婚している」「忙しい」「旅行好き」という情報を持つユーザー
「最近、ご家族との時間は取れていますか?リフレッシュを兼ねて、今度の休日はどこかにお出かけしてみてはいかがでしょう?お住まいの近くだとこういった場所がありますよ」(→エリアを提案)
●教育サービスの場合:理科が苦手なテスト前の学生
「来週はテストですね。今日は苦手な理科の基礎問題に取り組んでみませんか?」(→よく出る理科の基礎問題などのページ・サイトへ遷移)
◾️強み2.サービス情報の取得・応用
また、WebスクレイピングやAPI連携によって、サービス側の情報を取得・分析することができます。
たとえばECサイトの場合、データベース連携をすることなく全商品の自動解析が可能です。商品数やコンテンツなどボリュームの多いサイトでもパーソナルAIがすべてを解析し、ユーザー情報と照らし合わせることで最適な情報提案を行います。
提案シナリオの設定や提案商品の選定といった手間は不要です。
ユーザー情報に加え、ユーザーがよく閲覧するページ情報なども考慮したうえで商品・コンテンツを自動選定し、提案まで一気通貫で行うことができます。
◾️パーソナルAIの具体例
このように、企業が保有する共通IDとパーソナルAIを連携すれば、ユーザーをより詳細にとらえ、サービス・コンテンツをまたいだ情報提案ができるようになります。
パーソナルAIの活用は、様々な業界・業種で可能です。
たとえばキャラクタービジネス企業に導入した場合、「○○さんの好きなキャラクターの新たなグッズが発売されましたよ」「この間グッズを買ったアニメキャラが映画化されるみたいです!」といったように、AIがユーザーの顧客データを自動解析し、関連商品・サイトに送客することができます。
会話をすればするほど提案の精度が上がるため、信頼関係を構築すると共に、幅広い提案はユーザー自身も気づいていないような新たな発見にもつながります。
また、ポイント系サービスなどと連携すれば、企業内のあらゆるサービスを訴求できます。
たとえばECサイトでワンピースを購入したユーザーに、「そろそろポイントが貯まってきましたね。今回購入したワンピースを着て、先日行きたいと言っていた〇〇エリアにお出かけしてみては?」と旅行サイトへ促すことも可能です。
このように、特定のタイミングや表示時間によって無機質に出現するポップアップとは違い、SELFのパーソナルAIはユーザーの好みや傾向を把握し、根拠のあるアプローチを行います。
「他のケースが知りたい」
「費用は?」
「サービスについて詳しく聞きたい」
その他、ご質問は随時受け付けております。
ご興味がおありの方、導入をご検討の方はぜひお気軽にお問い合わせください。
<参考資料>
内閣府
【年齢区分別将来人口推計】
【楽天と楽天データマーケティング、 O2Oマーケティングソリューション「RMP – Go! Spot」を提供開始】
野下 智之
【楽天IDを基軸に、オン・オフ統合マーケティングに向けた一歩 [インタビュー]】
菊地崇仁
【グループのポイント統合 JR東日本やイオンで便利に】
佐藤史佳
【日本経済新聞 「共通ID」でサービス連携】
MarkeZin編集部
【9割以上のマーケターが人材不足を実感/特に「戦略設計」担当者の不足が課題に【BLAM調査】】
SELFのライターを中心に構成されているチーム。対話型エンジン「コミュニケーションAI」の導入によるメリットをはじめ、各業界における弊社サービスの活用事例などを紹介している。その他、SELFで一緒に働いてくれる仲間を随時募集中。