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◾️あの人気ゲームはメタバースの走り?
突然ですが、あなたは「ドラクエ」をご存知ですか?
ドラゴンクエスト(通称:ドラクエ)は、悪事を働く魔王を倒すため、架空の世界に旅に出るゲームです。プレイヤーは主人公を操作し、海や山を越え、広大なフィールドを駆け巡ります。プレイしたことがある方なら、あたかも自分自身が冒険をしているかのような錯覚に陥った人もいるのではないでしょうか。
このドラクエの世界は「メタバース」の走りと考えられます。
メタバースとは、英語の超(meta)と宇宙(universe)を組み合わせた造語で、インターネット上に存在する3次元の仮想空間のことです。現実世界に身を置きながら、自身をアバター(化身)に置き換えて仮想空間内を自由に動き回ることができます。
ドラクエは一例ですが、近年メタバースは存在感を強めています。2021年には、Facebookが社名を「Meta(メタ)」に変更し、メタバース事業に約100億ドル(約1兆1000億円)を投じると発表しました。また2022年には、SoftBankがメタバース企業に対して約80億円の資金調達を主導しています。
メタバースとはいったい何なのか?
なぜメタバースが注目されるようになったのか?
ここではそんな疑問を解消すると共に、メタバースが広がる可能性について考えてみたいと思います。
◾️「セカンドライフ」で注目を浴びたメタバース
メタバースという言葉が初めて使われたのは、作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」だと言われています。連邦政府が崩壊し、仮想世界「メタヴァース」が隆盛を極めている時代に、ピザの配達人と凄腕ハッカーという二つの顔を持つ男の人生を描いた話で、後世の作家・技術に大きな影響を与えたとされています。
その後2000年代に入り、アメリカのLinden Lab社が「Second Life(セカンドライフ)」というメタバースを構築しました。広大な仮想世界を歩き回り、家を建てたり買い物をしたり、はたまた店を経営したりといったことも可能で、現実世界のような体験ができるということで世界中で話題となりました。しかし当時は、パソコンのスペック不足やメタバース上の経済システムの崩壊等により、メタバースはその魅力を生かしきれずにフェードアウトしていったのです。
◾️ブーム再来のきっかけはオンラインゲーム
その後、インターネットやオンラインゲームが普及し、バーチャルというものへのニーズが再び高まり始めました。十数年を経て、ハイスペック化したパソコンやインフラ技術の成熟化により、メタバースに耐えうる基盤が用意されたのです。SNSの普及も相まってメタバースは密かな注目を集め、このブームはセカンドライフに続く「メタバース第二の波」と呼ばれました。その背景には、ゲームの存在も大きかったと考えられます。
◾️マインクラフト(MINECRAFT)
アルファ版を経て2011年に正式発売された「マインクラフト(MINECRAFT)」は、山や川、草原、雲などがブロックで構成され、仮想空間内で建築をしたりサバイバル生活を楽しんだりするオープンワールド(=シームレスな広いマップ)ゲームです。自由度が高く、必要なものや好きなものを自分の手でつくっていくことから、プログラミングをはじめとする学習ソフトとしてマインクラフトを扱う学校もあります。マインクラフトは爆発的にヒットし、2020年には世界のビデオゲームの殿堂入りを果たしています。
◾️フォートナイト(Fortnite)
また、2017年にアメリカのEpic Gamesが発売したオンラインシューティングゲーム「フォートナイト(Fortnite) 」は、2020年に登録ユーザー数が3億5000万人を超え、アメリカの人口3億2820万人を上回るほどのヒット作品となりました(※2019年時点。アメリカ合衆国国勢調査局調べ)。仮想空間上でアバターを操作し、武器や基地をつくったりしながらミッションを遂行するというもので、戦闘要素以外にも、フォートナイト内で映画を上映したり有名アーティストがライブを行うなど、ゲームの枠組みにとらわれない楽しみ方ができます。フォートナイトの将来性に目を付ける企業も多く、SONYはEpic Gamesに2.5億ドル(約268億円)を出資しています。
◾️あつまれ どうぶつの森
「あつまれ どうぶつの森」は2020年に任天堂から発売され、6週間で1341万本を売り上げる人気ゲームとなりました。「何もないから、なんでもできる」というコンセプトのもと、プレイヤーはアバターを通して、無人島で家を建てたり作物を育てたりしながら自分の街をつくっていきます。人を呼んでライブや発表会をすることも可能で、ゲーム内で様々なユーザーとコミュニケーションを取ることができます。また、発売時期がコロナ禍だったこともあり、ソーシャルディスタンスを求められる現実世界において、人とのつながりを擬似的に体験できるといったことも人気の要因となったのではないでしょうか。
◾️メタバースの課題とは?
このように、技術的にも成熟し、ニーズが高まりつつあるメタバース。イノベーションを起こす可能性を秘めている一方、課題もあります。
一つは標準規格がないことです。
プラットフォーム間でのやりとりができず、Microsoftで作成したアバターをMetaのサービスでも使用できなければ、おそらく一般化は難しいでしょう。より多くの人がアクセスするようになるには、かつてインターネットが構築されたときのように、一つの大きなプラットフォームを構築する必要があります。
現在、MetaやMicrosoft、SONYをはじめ、未来の標準プラットフォームを作ろうと世界各国の企業がしのぎを削っています。やがて大きな土台が完成し、そこでサービスが展開されれば、メタバースは大きな市場価値を生み出す新世界となるかもしれません。
また現状、リッチなメタバースを体験するには専用デバイス(ゴーグル、ヘッドセット等)の装着・接続が必要です。大きなハードを装着する手間や煩わしさを解消することも、一般化させるためには急務と言えるでしょう。
◾️話題になった「バーチャル渋谷」
日本においては、2021年に「バーチャル渋谷」と呼ばれる渋谷区公認のプラットフォームが期間限定で配信されました。渋谷の街がメタバースに忠実に再現され、世界中から多くの人々がアクセスし、企業やアーティストなども参加して話題となりました。これを受け、東急やKDDIをはじめとする企業が都市連動型メタバース 「バーチャルシティコンソーシアム」を発足させ、メタバースの構築に向けてガイドラインや情報発信等をしていくと発表しています。
先述のような懸念が払拭され技術発展が進めば、現実世界のあらゆる物事がメタバースで実現できる可能性があります。
- コミュニケーション
- ショッピング
- 仕事
- 旅行
- デート……etc
食事や睡眠といった生理現象を除けば、ほぼ全てのことがメタバースで完結する。そんな近未来を想像すると、ワクワクする人もいれば不安に思う人もいるでしょう。
そんなとき、あなたのそばにSELFのAIロボットがいたら……?
◾️メタバースに存在する、あなただけのAIロボット
SELFとは、AIロボットがユーザーと会話をして属性情報や健康状態、趣味趣向等を記憶していくことでユーザーをサポートするスマホアプリです。アプリに搭載しているのは独自開発した会話エンジンで、会話をするたびにユーザーのことを知っていくため、個々に適した提案やアドバイスが可能で、ユーザーと長期的な関係を築いていくことができます。
現在はデバイス上に存在し、画面を通しての対面コミュニケーションという形をとっていますが、もしメタバースが構築されれば、既存エンジンを応用してAIロボがユーザー(アバター)と同じ空間に存在するといった仕様が検討されるでしょう。そうなったとき、いったいどんな活用イメージになるでしょうか?
◾️1.手と手が触れ合うコミュニケーション
同じ空間で、手と手が触れ合う距離感に存在すれば、言葉にできない空気感やリアクションなども拾え、それはまるで現実世界で友人と話しているかのようなコミュニケーション体験となり得ます。
◾️2.見知らぬ土地をナビゲート
また、AIロボが辺りを見回せば、見落としてた店や話題のスポットなどを見つけてくれるでしょう。「これを探してた」「こんな場所があったんだ」など、ユーザーの潜在欲求をAIロボが把握しナビゲートしてくれることで、思いもよらない発見・体験が可能です。
◾️3.適切な情報提案
さらに、記憶力・情報処理力という点においては人間よりも優秀です。現状、情報の取捨選択は人間に委ねられており、数多の情報量から正しい選択をするのは大変なことです。「これどうしたらいいの?」という疑問から、「メタバースで家を建てるか悩んでいる」といった具体的な悩みまで、AIロボが情報を分析・処理し、ユーザーニーズに沿った提案をします。
メタバースやIT技術に詳しい人ならまだしも、そうでない人にとっては、何をすればいいのか、どの情報を見ればいいのかわからないことも多く、メタバースという大海原に小舟で飛び出すようなものです。
海図の見方や海賊に遭遇したときの対処法など、ユーザーのニーズに合わせてAIロボが提案し、ユーザーと一緒に海に出ることができれば、安全な旅ができるのではないでしょうか。弊社はこの会話エンジンを活用し、今も未来もユーザーのナビゲーターとして存在していくつもりです。
◾️今後の動向に注目
日本でのインターネット黎明期と言われる1990年代後半、わずか10%足らずだったインターネット普及率は、2019年には89.8%(利用者数:約1億815万人)となっています(上図)。さらに、インターネットを基盤としたスマホやSNSが台頭し、かつ新型コロナウイルスによるソーシャルディスタンスもオンライン需要の増加に拍車をかけています。
ITを取り巻く環境が目まぐるしく変化してきた歴史を鑑みると、今後メタバースが普及する可能性は十分あるのではないでしょうか。
まだまだ課題の残るメタバースですが、今後の動向に注目しつつ、豊かで安心な暮らしができるよう弊社も準備を進めていきたいと思います。
<参考資料>
【総務省 通信利用動向調査】
令和元年調査(令和02.05.29公表。令和03.8.4訂正)
【CNET Japan】
いま話題の「メタバース」とは ー 知っておくべき5つのこと
【日本経済新聞】
Facebook、社名を「メタ」に変更 仮想空間に注力
【ワークプレイスDX】
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【渋谷5G エンターテイメントプロジェクト】
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