デジタル技術の進化により、私たちの生活やビジネスは大きく変化しています。その中でも注目を集めているのが「デジタルヒューマン」と「生成AI」です。本記事では、注目されるデジタルヒューマンの基本から生成AIとの組み合わせによる新しいソリューションの可能性、さらに手軽に導入できる方法までを詳しく解説します。
目次
◇デジタルヒューマンとは
◆デジタルヒューマンの概要
デジタルヒューマンとは、コンピュータで生成されたヒト型のモデルのことです。リアルな外見や動作、声を持ち、人間のように振る舞うことができる3Dモデルを指します。
従来のCGアニメーションやアバターと異なり、AIや機械学習の技術を活用することで、リアルタイムでユーザーとコミュニケーションをとったり、パターン化しない自然な振る舞いを実現することができます。
デジタルヒューマンは「バーチャルヒューマン」とも呼ばれることがありますが、その場合はデジタルヒューマンの中でも、ユーザーと双方向のコミュニケーションが可能(インタラクティブ)なモデルを指す場合が多いです。
◆デジタルヒューマンの効果
デジタルヒューマンには、カスタマーエクスペリエンス(顧客満足度)を高める効果が期待されます。デジタルヒューマンは、テキストベースでやり取りを行う一般的なチャットボットにはない、「感情表現」や「親近感」を伴う体験を提供することができます。
・メラビアンの法則とは
心理学の分野で知られる「メラビアンの法則」は、人同士のコミュニケーションにおいて「言葉」以外の要素(表情、声のトーン、など)が大きな影響を与えることを示しています。この法則を提唱した心理学者・メラビアンの研究によると、感情や態度を伝える際、相手が受け取る情報の割合は次のように分けられます。
- 視覚情報(表情・目線など): 55%
- 聴覚情報(声のトーン・話し方など): 38%
- 言語情報(話の内容): 7%
一般的なチャットボットは言語情報(人同士のコミュニケーションにおける7%の情報)しか伝えることができませんが、人と同じような表情や音声を出力可能なデジタルヒューマンは、視覚情報や聴覚情報を伝えることができるため、より多くの情報を伝達できることになります。
人とロボットのコミュニケーションにも「メラビアンの法則」が当てはまるとすれば、どちらが高度な顧客体験を提供できるかは明白です。
・顧客対応コスト削減の効果も
デジタルヒューマンは、より人間に近い顧客対応を自動で行うことができるため、接客などのコスト削減にもつながります。人間の従業員と違って24時間365日、同時に複数の顧客に対応することもできるため、長期的に見るほど費用対効果は高くなります。
◆開発コストが課題
デジタルヒューマンのような高度なヒト型モデルは、初期開発やカスタマイズにおけるコストの大きさが課題なる場合があります。
よりリアルな外見や高度なパフォーマンスを実現するためには、複数の先端技術を組み合わせる必要があります。リアルな外見を実現するCG、自然な動作を可能とするアニメーション技術、正しいイントネーションと抑揚を持った音声出力、臨機応変に対応可能な会話能力、そしてそれらを適切に連動させ、制御するシステムが必要です。これらのクオリティが一定の水準に達していないと、「不気味の谷現象(ロボットなどが人間に近づくほど些細な差異に違和感を感じる現象)」につながり、幅広いユーザーに受け入れられることは難しくなります。
しかし、当然ながら上述した先端技術を複数組み合わせたモデルは、品質を高めようとするほど開発コストも高額になる可能性があります。また、高度なモデルをいちから制作する場合は開発期間も長期に及ぶことになり、想定外のコストが追加で発生することも考えられます。
◇生成AIとAIアバター
上述のように、デジタルヒューマンのような高度なヒト型モデルを開発する際の最大の課題は、コストの大きさといえます。
カスタマーエクスペリエンスの向上が期待できるとはいえ、開発だけで膨大なコストを要するシステムを自社サービスに導入できるのは一部の大企業に限られるでしょう。しかし近年、生成AI技術の進歩によってこの状況は変わりつつあります。
◆生成AI技術の進化
生成AI(Generative AI)は、テキスト、画像、音声、動画などを生成する人工知能技術です。近年では、ChatGPTなどの言語生成モデルやDALL-Eなどの画像生成モデルの進化により、より自然で高品質なコンテンツを短時間で作成できるようになっています。また、プロンプトや画像から動画を生成する技術や、入力したテキストを自然な音声で読み上げる技術も急速に進化しており、これらの技術がデジタルヒューマンなどの分野にも大きな影響を与えています。
◆「リアルな人間」を生成可能?
従来はCGでリアルな人間の外見を表現するために、3Dモデリングに多くのコストがかかっていましたが、生成AIを活用することでプロンプトや参考画像から瞬時にリアルな3Dモデルを生成することが可能となりました。
また従来は、人同士の会話のように自然なコミュニケーションを実現しようとすると膨大な量のシナリオテキストを作成する必要がありました。しかしこれも、GPTなどの言語生成モデルを利用すればシナリオ作成などの手間もなく、自然な会話体験をリアルタイムで提供できます。
このように生成AIモデルを活用することで、デジタルヒューマンのような高度なヒト型アバター(以下、AIアバター)を低コストで作成することが可能なのです。
◆人間、チャットボット、AIアバターの費用対効果
ヒトの容姿や声も含めた振る舞いをデジタルで再現したのがAIアバターとするならば、ヒトのコミュニケーションのみを機械的に再現したのがチャットボットです。チャットボットもまた、近年の生成AI技術の進歩によって大きな進化を遂げており、より人と人との対話に近い自然なコミュニケーションが可能となっています。デジタルヒューマンなどと比べて安価で導入できるため、ビジネス分野ではより身近な存在といえるでしょう。
しかし、上述したメラビアンの法則に則ると、一般的なチャットボットではユーザーに提供できる情報が限定的であるため、体験の質という意味では不十分かもしれません。
現状では、各々に利点と欠点がありますが、AIアバターは、人間の従業員とチャットボット双方の欠点を補うことのできる存在といえるかもしれません。
◇AIアバターならではのブランディング
AIアバターの特徴である視覚的・聴覚的な表現力を活用することで、効果的なブランドイメージの訴求が可能となります。特に、ユーザーと双方向的なコミュニケーションが可能なモデルは様々な場面で活用できるため、企業のブランディングにおいて極めて有効な資産となり得ます。
・Webサイトでの案内、カスタマーサポート
・実店舗での接客員、案内係
・動画サイト、SNSを活用したコンテンツ
AIアバターは、上記のような様々なチャネルにおいて一貫したブランドイメージを訴求することができます。また、生成AIを活用することで細かい挙動の調整を行うこともできるため、費用対効果の高いブランディングが可能となるでしょう。
◆AIアバターが費用対効果の高いCMタレントに
従来のブランディングとして、芸能人などのタレントを起用した広告手法はメジャーですが、生身のタレントを長期間起用し続けるには、膨大なギャランティが発生します。また、タレントの不祥事などでイメージが損なわれると、同時にそのタレントをCMに起用した企業のイメージも損なわれる恐れがあります。
AIアバターは、一旦開発が完了すれば企業固有の資産としてあらゆる場面に自由に起用でき、人間のタレントのように不祥事を起こしてブランドイメージを損なうリスクもありません。
◆AIアバターを作成するには
生成AIを利用することで従来よりも手軽になったとはいえ、やはり高品質のAIアバターを開発するには様々な生成AIモデル(言語、動画、音声など)を組み合わせ、統合するための高度な技術が必要です。自社で開発するハードルが高い場合は、AIアバターなどのサービスを利用するとよいでしょう。
・高精度の自動応答が特徴「SELFBOT AIアバター」
SELF株式会社(弊社)の提供する「SELFBOT AIアバター」は高度な対話能力を備えたAIアバター開発サービスです。写真やイラストなどの画像データから、滑らかな動作が可能な3Dモデルを生成することができます。また、回答品質に定評のある生成AIチャットボット「SELFBOT」と同じ応答システムを採用しているため、ユーザーからのあらゆる入力に対して、正確かつ柔軟な回答を提供することができます。
「SELFBOT AIアバター」の詳細は下記ページをご覧ください。
SELF株式会社の公式AIアバターである「AIサトウミライ」との対話体験も可能です。
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SELFのライターを中心に構成されているチーム。対話型エンジン「コミュニケーションAI」の導入によるメリットをはじめ、各業界における弊社サービスの活用事例などを紹介している。その他、SELFで一緒に働いてくれる仲間を随時募集中。