誰でも簡単にネットショップが作成できるサービス「BASE(ベイス)」と購入者向けショッピングサービス「Pay ID(ペイ アイディー)」に、2024年3月よりSELFBOTを導入いただいております。
今回は、カスタマーサポート担当でSELFBOT導入窓口のBASE株式会社(以下、BASE)山口様に、導入にあたっての経緯や決め手、導入後の効果などのお話を伺いました。BASEのバックグラウンドやカスタマーサービスとしての考えにも触れることができ、多岐にわたるインタビューとなりました。
■BASEと山口さんについて
── はじめにBASEについて教えてください
弊社はネットショップ作成サービス「BASE」というマーチャント向けのサービスと、「BASE」を利用してショップを開設されたショップでのお買い物体験を向上する「Pay ID」という購入者向けサービスの、大きく2つのサービスを展開させていただいてます。
その他にも「YELL BANK」という、ショップオーナー様の資金調達をサポートするサービスも行っております。
「BASE」は、スモールチームをはじめとしたどんな方たちにも、自分のやりたいこと、表現したいことを実現する場として提供させていただいているサービスです。
── 山口さんはどのような部署に所属しているんですか
私は、「BASE」の事業を行う部門のカスタマーサポートの部署に所属しています。
正式には、オーナーサポートセクションという中の、CSオプスというグループのグループマネージャーをさせていただいています。
このCSオプスが具体的に何をするかというと、AIの機能を使ってユーザーさんの問題を事前に解決できるような環境作りだったり、ユーザー様がSNSなどで投稿されていることを収集して、なるべく早くユーザー様の問題解決に乗り出すということをやっています。
ユーザー様からの声に対応するだけでなく、自分たちから打って出てショップオーナー様の問題を早期に解決していくという部署です。
それに加え、ヘルプページの改善も担っています。
我々はショップオーナー様ご自身が実現したい世界だったり、提供したい商品に向き合える時間を指して、「クリエイティブタイム」というワードをよく使うのですが、そういった「クリエイティブタイム」を少しでも多く作っていただけるよう、「お問い合わせする必要がない状態」にできる限り近づけるために日々努力しています。
── 単に問い合わせを減らすという考えではなく、その背景にあるのは『クリエイター、ショップオーナーの方が創作に集中するためにサポートする』という考えなんですね
はい。全ては『ユーザー様のため』というところにつながっていると思います
AIなどITツールを使って解決するとお伝えしましたが、AIツールの利用だけにフォーカスするのではなく、あくまでお問い合わせを減らすための技術ならなんでも前向きに検討しようと考えています。
■導入の背景
── 最初にお問い合わせいただいた時『すごく急いでいらっしゃる』という印象がありました。すぐに解決すべき課題があったのでしょうか
「BASE」のサービスがリリースから10周年を迎えたタイミングで、より多くのユーザー様にご利用いただけるようにと、サービスのLPリニューアルや改善に加え、クーポン配布キャンペーンのような集客に関する様々な施策を行った結果、お問い合わせが純増したんです。
それに伴い、私たちとしては、お問い合わせに対してユーザー様に向き合い、すぐに返したいのに返せないという状況が続いていました。
そこで注目したのが、「ユーザー様の自己解決」という部分でした。我々としては、ユーザー様が自己解決できるサービスが十分に提供できていないということに着目し、ヘルプページにフォーカスして改善していこうという流れになったんです。
ただ、弊社の場合、ショップオーナー様と購入者様のどちらも顧客としていらっしゃるので、それぞれに対応しつつ充実したヘルプページを提供しようとすると、かなり膨大なページ数になるという問題がありました。
サービス形態によって異なるかと思いますが、一般的なITサービスではヘルプページの数は大体500ページ前後が標準です。ところが、弊社ではその倍の約1000ページあり、さらに一つひとつわかりやすく個別に切り出しているために、情報が多すぎてユーザー様が必要な回答に辿り着けず、直接お問い合わせいただくという課題がありました。
メンバーも、お問い合わせいただいてから早期に返答したいのにお待たせしてしまう、という状況が続くと疲弊しますし、この問題をなるべく早く解決したいという思いにつながっていましたね。
そこで、これをいち早く解決できるツールがないかと色々と探していたという背景がありました。
── ヘルプページを改善する中で、AIを活用して解決しようという発想に至った理由を教えてください
まずは、弊社もプロダクト側としてAIを活用したサービスを提供していて、ユーザー様の反応が非常に良かったということ、そして現在徐々に熱が上がっている領域にチャレンジしてみたいというところがありました。
同時に、ヘルプページの限界というのも感じていたんです。
ヘルプページについてまだまだ改善の余地はあると思っていた一方で、ユーザー様の言葉で検索していただいた際、私たちが適切な情報を提供できているのかというとなかなか難しいというのがありました。またヘルプページでは、案内を見る側の咀嚼の仕方によっては、受け取り方が変わっていってしまうという懸念もあり、キャッチボールのように人と会話をしているような回答をする点にAIの良さを感じたというのも理由です。
■ なぜSELFBOTを選んだのか
── SELFBOTを導入いただいた決め手を教えてください
一番印象的だったのが、SELFの営業の方がすごくスピーディーで、丁寧に色々と教えてくれたり、提案してくださったことです。私たちも色々な会社の方にお話を伺った上で選ばせていただいたのですが、サポートの素晴らしさというところが秀でていて。
我々自身もカスタマーサポートをしているので、そこは余計に敏感に感じました。
私たちは、時には無理な相談もさせていただくケースがあるのですが、そういう場合でもただNOと言わず「こういうやり方がありますよ」という形で、逆により良いやり方を提案いただくなどフレキシブルに一緒に伴走いただける点に魅力を感じましたし、今も頼らせていただいています。
また、弊社の課題としては、サポートメンバーがそんなに多いわけではないため、QA登録やシナリオ登録を必要とする形式の場合、メンテナンスにコストをかけられません。そう考えた時に、SELFBOTはすでにサイト上にあるヘルプページのURLを登録するだけで、きちんと読み取り、なおかつ再読み込みも定期設定できるので、メンテナンスコストをあまりかけずに最大の効果を出せるだろうというところが一番の魅力でした。
他にも、サービスレベルも定義されているところ、例えば「導入したら、どれだけの解決率になった」ということを明示されてたのが安心しました。我々としても新しいサービスを導入するということはチャレンジになりますから。あと、SELF社として大学VCとの提携やこれまでの導入実績なども安心材料の一つとなったと思います。
── 他に他社様との違いなどはありますか?
はっきりとした料金表があったのも、結構大きい部分でした。
他社サービスでも、生成AIは使った分だけ費用がかかる従量課金がほとんだと思います。その中で、SELFBOTは「このレンジの中ではこの値段だ」という明確な料金表を提示していたところが、非常に安心しました。言い値ではなく、どこにでも平等に費用を提示してくれるというのは選びやすかったし、決め手になったと思います。
■導入のプロセス
── サイト上のURLを登録するだけということでしたが、導入での具体的なプロセスを教えてください。
まず、AIへの学習というところで、1000件ほどある弊社のヘルプページを一覧化し、それをSELFの方に1日程度で読み込んでいただいて、次の日にはテスト環境に反映となりました。テストを2日ほどしてリリースというようなプロセスでした。リリースまで実質3日で、本当にあっという間でした。
弊社では、基本的にQAリストなどは作らず、常にヘルプページに反映していくという運営をしていたので、URLを準備するのはハードルが高くなかったです。
── 導入の時に工夫した、注意したところなどあれば教えてください。
やはり「工数を最低限に、最大の効果を出したい」というところから、管理の工数をかけないように工夫した点だと思います。
そして、プロンプトの部分ですね。ユーザー様の問題が解決しないときに、どういう導線があるのかを示すというところに工夫を重ねました。
AIを導入し、ユーザー様に使っていただければいただくほど、AIがどういう挙動をした結果ユーザー様がどう思ったのかが見えづらくなると思っています。
AIの回答に違うと感じたユーザー様の離脱ポイントを減らしていきたいと考えているので、離脱しそうなポイントにすぐにお問い合わせいただけるような導線を、プロンプトを通して設定したりということを実施しました。
「問い合わせを削減したい」という意識が働くと、問い合わせ導線を塞ぐという行動になりがちだと思うのですが、私たちはユーザー様の問題解決のために生成AIを導入しているので、ユーザー様が解決できない場合は、問い合わせをするための導線はわかりやすく確保するということが大事だと思っています。
── AIが解決できる可能性がある場合はそれを試し、それでは解決しない部分はサポートチームが対応するというというステップがうまく設計されているんですね。
■ 導入の効果
── 「UXにこだわりながら、問い合わせを削減する」という目的だったと思います。実際にSELFBOTを導入して、どのような成果や効果が得られたかを教えてください
定量的な数字で言うと、SELFBOTに問い合わせいただいたユーザー様の30%程度が、その後問い合わせに進まず、問題を解決できたという状況になっています。それによって我々の部門の生産性が上がり、ちゃんと問い合わせをしたい方々に時間を掛けられる環境になってきました。必要な方に早く回答できるようになった、というのは大きい効果だと思っています。
── 導入前後で3割ほどの問い合わせ削減に貢献できたと言うことですが、これをさらに高めていくというような目標があるんですか?
数値目標というよりは、目標とする状態を考えています。
今は「わからない」を「わかる」ようにしている状況だと思っていて、不明なものを不明じゃないようにするから「問い合わせが減る」という作用を生んでいます。でも、ショップオーナー様が「どうやったら売り上げが上がるのか」とか「どうやったら自分の叶えたい世界になるのか」のようなことも問い合わせになると思っていて。そんなアドバイスのようなことも、情報を入れれば提供できるような世界になればいいと思っています。
「問い合わせ数を減らしたい」というよりは、ヘルプページで解決できるものに関してはそこで解決していただく。その上で、ショップオーナーさんであれば自分のクリエイティブタイムを確保したり、営業の資金を得るための方法をインプットしたり、自分が注力したいことにより時間を使っていただきたい。また、購入者様だったら購入の体験上で問題なくスムーズに行うための補助的な働きもできるといいなと。今後の目標とする状態としては、問題解決のようなマイナスを0にするだけでなく、プラスの情報も提供できるようにしていきたいと思っています。
■導入後の運用について
── 運用の中で、注意している・重視しているポイントなど教えていただきたいです。
弊社の場合、問い合わせをできる限り減らしていき、それがユーザー様のためになるというところを目指してやっているので、定量的に指標を設けて、それに対し今どれくらいの状態なのかというところを見にいき、指標との乖離に対して仮説・検証を繰り返し実施しています。
その中で、特に問い合わせ導線の中に埋め込まれている、チャットボットの効果を見ています。問い合わせに至ったか、問い合わせに至らなかったか、っていうところを見て、実際寄せられた問い合わせ内容から「これだったらAIにまだ回答する余地があるな」とか「これは難しいからそのままで」などの判断をしています。
ただ、できる限りユーザー様が解決できる環境を提供し続けていきたいと思っている一方、情報というものはどんどん更新されていくものなので、運用の工数はできる限り圧縮していこうと考えています。
SELFBOTは、ヘルプページの改善をすれば、AIの回答も自動で改善できるので、コストの掛け方としては最善かなと思っているところですね。
もう一つとして、ユーザー様が不安にならないようにするということもポイントだと思っています。最初に「AIなので間違ったことを言います」や「間違うことがあり得ます」のようなものは、ハルシネーション対策としては必要だと思っているのですが、「間違えるんだ」というインプットをしてしまって情報への不安感を煽り、お手間をかけさせることにつながることもあるのではとも思っています。
そのため情報としては理解していただいて、その上でわからないのであればすぐにお問い合わせいただけるというところに気をつけています。AI側の案内の仕方や、ニュアンスみたいな部分でも、改善が必要だと我々も思っているところです。
── 運用の中で、リソースとなるヘルプページを修正・変更するということをメインに実施されているんですね
それしかほぼしていないです。ヘルプページって、作った段階はプロダクト側の意思が載っているケースが割とあると思っていて、実際にユーザー様が求めていること以上のことまで心配して書いてしまっているなと。
ですから気をつけているのは、押し付けがましくなっていないか、ということです。
企業の思いなどはあるんですが、使っていただくのはユーザー様なので、ユーザー様がどうありたいか、どういうふうに困っているのか、というのはAIとは関係なくどこまでいってもカスタマーサポートは追求していかなくてはいけない。その時に、問い合わせだけを見ているのではなく、AIがどういう回答をしているのかまで含めて押し付けがましくならないようにしていきたいと感じています。
■ SELFBOTと描く未来
── SELFBOTを導入してよかった点を教えていただけますか?
導入までのスピードがすごく速いですし、スピードに対しての品質がすごく良かったと思っています。コード一つ入れただけで、すぐにチャットボットが表示できるなど、SELFBOTは非常に導入が簡単でした。AIと聞くと難解なものになるケースが多いイメージがあって、それが一発で解決できるのはすごいというのを感じました。
あとは、やはりすごく寄り添っていただけたところがよかったと思いますし、SELFさんとは親和性が高かったと思います。我々が提案したものに対して拒否感みたいなのもなかったですし、提案したものをさらに倍増させて「こういうことができそうだ」ということをおっしゃっていただけたことが大変良かった点だと思います。
だからこそ、弊社としても気づいたこととか、SELFBOTがより良くなるご提案などもお伝えしたい気持ちになりますし、その関係性が非常にうまく取れているなと思います。それはおそらくSELFの皆様にご協力いただけているところなのかなと。
── 最後に、今後どうしていきたい、どういうことを目指したいなど改めてお聞かせください
基本的には、AIでできるところはフルまでやっていきたいと思っています。
その世界がどういうものかというと、ユーザー様の疑問を解決するだけではなく、より良い提案ができるように、ユーザー様の課題に対して私たちやAIがこれまで対応をしてきた経験やナレッジをより生かせるような環境にしていきたい、注力していきたいと思っています。
そのために何が必要か、例えば学習リソースをどうするのかや、今の工数はこれでいいのか等の具体的な話も上がってくると思いますが、目指すべき世界はブレずに、「ユーザー様の問題解決のその先」というところを目指していきたいと思っています。
■ インタビューを終えて
山口様のインタビューを通して、BASEの行動の基盤にある「ユーザー様のために」という熱い思いが深く伝わってきました。「ユーザー様がクリエイティブに集中するため」「ユーザー様の理想を実現するため」「ユーザー様が欲しいものを手にするため」という、カスタマーサクセスはもちろん、ユーザー様を軸にした思いや行動がBASEの方全員に確立されているのだと感じました。そこをさらに突き詰め、実現していただくために、SELFBOTもさらなるアップデートを続けて参ります。
山口様、この度はインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。
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