生成AIで業務効率化を図る動きが拡大しています。中でもChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)は、使い方次第で様々な業務を効率化できる可能性があり、注目を集めています。生成AIを効果的に業務活用するためにはどうすればいいのでしょうか。この記事では、企業による生成AI活用の具体的な事例と、生成AI活用を成功させるコツについて解説します。
目次
◇生成AIで業務効率化は可能?
結論から言うと、生成AIで業務を効率化することは可能です。
しかし、生成AI活用には現状解決されていないいくつかの懸念が存在します。また、効果的に活用するためには適切な準備と運用が必要になります。
◆国内外企業の生成AI業務活用状況
国内企業における生成AIの活用状況について、総務省が発表した令和6年度版「情報通信白書」によると「積極的に活用する方針」と答えた国内企業は15.7%にとどまり、欧米や中国と比較して慎重な姿勢が窺えます。
生成AI活用の懸念としては「社内情報の漏洩などセキュリティリスクの拡大」がもっとも高い割合を占めており、他にも著作権侵害や倫理問題への懸念などが挙げられています。
国内外企業の生成AI活用状況について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
◆RAG(検索拡張生成)による精度向上
LLMの精度をビジネス分野での実用に耐えうる程度まで高める技術として、一般化しているのがRAG(検索拡張生成)の技術です。RAGは、LLMのテキスト生成時に関連情報を提供し、生成される情報の精度(正確さ、精密さ)を高める手法です。
RAGを利用することで、社内資料を元にユーザーの質問に答えるチャットボットなどを構築することができます。信頼性の高い情報を根拠として回答を提供できるため、生成AIの問題点とされているハルシネーション(幻覚)を抑えることにもつながります。
RAGは現時点(2024年8月)での生成AI活用におけるもっとも実用的な手法と言えるでしょう。
RAGについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
◆生成AIで自動化・効率化できる業務
生成AIを活用して自動化・効率化できる業務には以下のようなものがあります。RAGを使うことでより幅広い範囲の業務に生成AIを活用することが可能ですが、RAGを使わずに効率化できる業務もあります。
RAGなしで効率化できる業務
・メールや議事録、資料などの作成補助
・キャッチコピーなどの案出し
・文書の要約、翻訳
RAGを使って効率化できる業務
・社内ヘルプデスク業務(社内資料、ナレッジ共有)
・カスタマーサポート(顧客対応)の自動化
・データ検索、分析の補助
◇社内の生成AI活用を成功させるコツ
ChatGPTの登場以降、数多くの企業が生成AIを業務に活用しようと取り組んでいますが、全ての企業が思い描いた通りの効果を得られるとは限りません。生成AIを効果的に活用するためには、適切な理解と準備が必要不可欠です。
◆「できること」と「できないこと」を把握する
まず、生成AIを活用する上で、現状の生成AIの性能について正しく理解することが重要です。
生成AIは特定の条件下でのタスクにおいて人間をはるかに凌ぐパフォーマンスを発揮します。たとえば大量のデータの中から目的のデータを瞬時に抽出したり、規則性を持ったデータを別の規則で並び替えたり、データを別の形式に変換する、といったタスクはAIの得意とするところです。
しかし一方で、現状の生成AIはSF映画に登場するAIのように「自律的な判断で最適な結果をもたらす」ことはできません。それどころか、誤った情報をあたかも真実のように語る(ハルシネーション)などAI特有の問題も存在します。
重要なのは目的を明確に定めることです。そうすることでツールに必要な機能や適切に制御するための手法が明確になり、想定外のトラブルを避けた効果的な運用が可能となります。
◆適切なデータを用意する
RAGによって生成AIのパフォーマンスを最適化するためには、高品質なデータベースの構築が欠かせません。どのようなデータを用意すれば最適なパフォーマンスを発揮するかは、目的によって異なります。たとえば社内ヘルプデスクやカスタマーサポートに生成AIチャットボットを利用する場合は、想定される質問と回答を網羅したFAQ集などの資料が有効なデータとなります。
また、データの質を高めることも重要です。RAGのパフォーマンスは、連携するデータベースの質に大きく影響されるため、データクレンジングやデータの構造化といったデータベースの質を高めるための前処理が重要になります。
他にも、RAGの場合はLLMの性能だけでなく検索モデルの性能や、データのチャンキング戦略も重要になります。生成AIを活用する業務の範囲やレベルによって必要な機能設計が異なるため、最適な結果を導くためには運用の中で調整可能な体制づくりが重要です。
RAGにおけるデータ整備について、詳しくはこちらをご覧ください。
◆社内ルール、ガイドラインの策定
生成AIの業務利用については、社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが懸念されています。実際に世界の先進企業でも生成AIを業務に活用したことによる情報漏洩の事案が複数報告されています。また、LLMが学習済みのデータの著作権や、倫理的に問題のある生成結果への懸念もあります。
こういった懸念に対応するには、
・機密性の高い社内情報を生成AIに送信しない
・AIが生成したデータを利用して良い範囲を定める
といった社内ルールやガイドラインの策定が必要です。
また、将来的には生成AIモデルの提供元の規約が変更されたり、新たな法制度ができる可能性も考えられます。生成AIを業務に利用する際には、常に関連情報の収集を怠らず、適切な対応を行うことが重要です。
◇生成AI業務活用の事例
ここからは、実際に生成AIツールを導入し、業務効率化に取り組んでいる企業の事例をご紹介します。
◆株式会社シンワバネスの事例
株式会社シンワバネスは半導体製造装置に使われるヒーターなどの設計や発注を請け負うファブレスメーカーです。シンワバネスでは、長年にわたって蓄積された膨大な技術情報やノウハウを社内で効率よく共有化するために、SELF株式会社の提供する生成AIチャットボット「SELFBOT」を導入しました。
SELFBOTは、RAG(検索拡張生成)によって精度の高い生成が可能なため、専門性の高い社内情報から一般に公開されている情報まで幅広く連携した上で、効率の高い情報検索が可能。これまで属人化していた専門性の高い情報の社内共有に貢献しています。
→株式会社シンワバネスの導入事例詳細
◆京都トヨペット株式会社の事例
京都トヨペット株式会社では、DXツールの導入や制度改革を積極的に進める一方で、その変化にともなう本部への問い合わせ増加や社員理解の浸透が課題として顕在化していました。
そこで、部署ごとにURLや社内文書、Q&Aなどのデータと連携した「SELFBOT」を導入し、社内問い合わせや資料検索の工数削減を図っています。
SELFBOTは、回答生成時に参照したドキュメントを表示することで、目的の資料や情報へのスムーズなアクセスを可能とします。また、ノーコードでボットを管理・運用可能な管理画面を提供しており、AIやRAGについて専門知識を持たない担当者でも手軽に運用することが可能です。
→京都トヨペット株式会社の導入事例詳細
社内利用におすすめの生成AIチャットボット
SELF株式会社の「SELFBOT」は精度の高い回答生成と使いやすい管理画面(コンソール)が特徴の生成AIチャットボットです。Microsoft Azure利用により高度なセキュリティを実現し、社内での情報共有やヘルプデスク業務の効率化に寄与します。
無料体験セミナー実施中
SELF株式会社ではSELFBOTの無料体験セミナーを定期的に開催しています。
無料体験セミナーでは、SELFBOTの管理画面を使って、RAG用データベース構築から運用、改善の流れをハンズオンでご体験いただけます。セミナーへのお申し込み、その他SELFBOTに関するご質問、資料請求等は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
SELFのライターを中心に構成されているチーム。対話型エンジン「コミュニケーションAI」の導入によるメリットをはじめ、各業界における弊社サービスの活用事例などを紹介している。その他、SELFで一緒に働いてくれる仲間を随時募集中。