2024年7月、総務省は情報通信業に関わる産業の実態について調査した最新版の「情報通信白書」を公開しました。
この記事では、最新の調査結果の中から国内外の企業における生成AIの業務活用状況について紹介し、生成AIの業務活用を成功させる方法を紹介しています。
目次
◇生成AI、企業での活用状況
2022年にChatGPTが公開されて以降、急速に普及が進む生成AI。特にビジネス分野での活用を模索する動きが活発で、国内外で数多くの生成AIを利用したサービスやツールが生まれています。
米国や中国で生成AIの企業導入が進む中、日本では生成AI活用に慎重な企業が多く、比較的導入が遅れている状況にあります。
◆業務への活用状況
「情報通信白書」に報告されている調査結果によると、「生成AIの活用方針が定まっているかどうか」という設問に対して「積極的に活用する方針である」と答えた日本の企業は15.7%に留まり、米国の46.3%、中国の71.2%という結果と比較して慎重な姿勢がみられました。
また、「生成AI活用による効果と影響」についての設問では、情報漏洩などのセキュリティリスクや著作権侵害への懸念などが挙げられ、日本の企業が生成AI導入に慎重になっている理由が垣間見えました。
◆生成AIが活用されている業務は?
次に、業務ごとの活用状況を見てみましょう。
メールや議事録、資料作成等の補助
生成AIの活用状況として、企業が「トライアル中」も含め「業務に使用中」と回答した割合がもっとも大きかった業務は「メールや議事録、資料作成等の補助」(69.5%)でした。
社内ヘルプデスクの自動化
「メールや議事録、資料作成等の補助」に続いて、社内のマニュアルや規約の参照、社内システムに関する問合せ対応などの「社内向けヘルプデスク機能」に生成AIを活用している(トライアル中含む)企業は65.4%でした。
顧客対応の自動化
一方で、カスタマーサポート等の「顧客対応の自動化」に生成AIを活用している割合は53.1%と、比較的少ないようです。セキュリティリスクなどを鑑み、まずは社内での業務から生成AIを活用したいという企業側の慎重な姿勢が見て取れます。
いずれの結果からも、比較対象となっている米国、ドイツ、中国と比べて、日本の企業が生成AIの活用に慎重であることが窺えます。
出典:総務省
◇生成AIの業務活用における効果と課題
上記、「情報通信白書」の調査結果から、生成AI活用によって想定される効果と影響について考えてみましょう。
◆生成AI業務活用の3つの効果
まず、生成AIを活用することによって得られる効果として、下記の3点が挙げられています。
- 業務効率化や人員不足の解消につながる
- ビジネスの拡大や新たな顧客の獲得につながる
- 新たなアイデア/新たなイノベーションがうまれる
①業務効率化や人員不足の解消につながる
近年、日本では少子化による労働人口の減少が深刻化しています。AI活用によって業務の自動化、効率化を進めることで、各企業の抱える人手不足の解消が期待されます。
AI活用によって単純作業の自動化やコンテンツ制作の効率化などを進めることで、能力ある社員のリソースを、より創造的なタスクにあてることができるでしょう。
②ビジネスの拡大や新たな顧客の獲得につながる
AIを活用することによって、ビジネス機会の創出や顧客獲得につなげることもできます。たとえば、顧客対応に生成AIチャットボットを使うことで24時間365日の対応が可能となり、顧客満足度が向上し、新たなビジネス機会につながる可能性があります。また、顧客とのチャット履歴などを分析することで、ニーズの把握や新たな視点の獲得に役立てることもできるでしょう。
③新たなアイデア/新たなイノベーションがうまれる
膨大な量の情報を学習済みの生成AI(LLM)を活用することで、新たなアイデアやイノベーションを生み出すことも可能です。一人の人間が考えつくアイデアには限りがあり、いくつものアイデアを生み出すにはそれなりに時間もかかります。生成AIは、ユーザーが指定した条件や数に従って瞬時にアイデアを提供することが可能です。
ただし、生成AIの出力する内容にはハルシネーション(幻覚)や著作権侵害、知識や思想にバイアス(偏り)が存在する可能性があることも念頭に置いておきましょう。
◆生成AI業務活用への懸念
上述したような効果が期待される一方で、生成AIの業務活用には企業が懸念する様々なリスクも存在します。
社内情報の漏洩などのセキュリティリスクが拡大する
「情報通信白書」によると、企業が懸念する生成AI活用の懸念として、もっとも高い割合を占めるのが「社内情報の漏洩などセキュリティリスクの拡大」です。生成AI利用による情報漏洩の事案は、Amazonやサムスンなどの有名企業で実際に起こっており、内容と規模によっては取り返しのつかない深刻な事態を招くことから、そのリスクを懸念している企業が多いようです。
著作権等の権利を侵害する可能性が拡大する
ChatGPTを開発した米OpenAI社は、国内の著名な作家らや大手新聞社から著作権侵害で訴えられています。ChatGPTが学習したデータの中に、個人や企業が著作権を有するデータが含まれており、そのデータをもとに生成した情報を出力することは著作権侵害にあたるという訴えです。
生成AIのデータ利用における著作権の問題は現在も活発に行われており、今後国家レベルで法規制やガイドラインが整備されたり、OpenAIのような開発元企業が利用規約を変更する可能性は大いにあります。企業として生成AIを利用する場合、著作権を取り巻く問題とその対策への動向は、常に気にかけておく必要があります。
生成物に倫理上不適切な内容や偏見が含まれる可能性が拡大する
生成AIの創造的な能力は業務を効率化することができる一方、様々な倫理問題を引き起こす可能性があります。たとえばAmazonでは、人材採用に活用されているAIが、男性の評価を高く見積もってしまうケースがあることが判明し、運用が中止となりました。
また、リクルートキャリアが運営する就活支援サイトでは、AIで算出した学生の内定辞退率のデータを、企業に販売していたことが大きな波紋を広げました。
前者はAI自体が持つ倫理問題への懸念、後者はAIを利用する企業の倫理感が問題視されたケースと言えるでしょう。
生成AI利用のセキュリティについては、こちらの記事をご覧ください。
◆生成AIの業務活用を成功させるカギ
上述したAI活用のリスクを回避し、効果的に業務活用するためには、どうすればよいでしょうか。
適切なユースケースを設定する
まず、生成AIを利用する業務の目的、範囲を明確に定めることが重要です。
現状の生成AIは、残念ながら「どんな状況にも適切に対応できる」ほどの性能ではありません。利用目的や範囲が曖昧であるほど、管理者にとって想定外の事態を引き起こす可能性が高まります。逆に目的や範囲を明確にすれば、ツールに必要な機能が明確になるため、生成AIを適切にコントロールしやすくなります。まずは、現状の生成AIに「できること」と「できないこと」を正確に把握した上で、適切なユースケースを設定する必要があります。
また、社内での業務に生成AIを利用する場合、利用目的と範囲を明確に定めて、そこから逸脱した使い方を禁止するなどのガイドラインを策定することも重要です。
生成AIサービスは精度で選ぶ
生成AIを業務に活用する場合、もっとも重要といえるのが安定した「精度」です。
生成AIの文脈における「精度」には、いくつかの意味があります。
たとえばRAG(検索拡張生成)を利用した生成AIチャットボットの場合、
・出力する回答の精度
・元のデータを構造化する精度
・参照データを検索する精度
などがあります。
これらの精度が低いと、生成AIはユーザーや管理者にとって満足のいく情報を出力してくれません。
また、単に「正しい情報」を出力するだけではなく、ユーザーにとっても管理者にとっても利便性の高い情報提供を実現するためには、生成AIの出力を意図通りにコントロール可能な仕組みづくりが必要です。生成AIについての専門的な知識、技術を持たない企業が、イチからこの仕組みづくりを行うのは困難です。その場合は、目的に応じた生成AIサービスやアプリケーションを利用すると良いでしょう。
生成AIチャットボットの精度については、こちらの記事をご覧ください。
生成AI業務活用は「SELFBOT」がオススメ
生成AIの業務活用には、LLM(大規模言語モデル)+RAG(検索拡張生成)による高精度の回答出力が可能な「SELFBOT」がおすすめです。
SELFBOTは「精度」にこだわった機能設計と、目的に応じて柔軟にカスタマイズできる汎用性を備えています。トライアルも可能なので、実際の性能を試した上で導入を検討できます。
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