生成AIを活用した新しいLINEマーケティングの手法をご存知ですか?
近年、BtoC事業において顧客エンゲージメント(=企業と顧客との間の信頼関係)の強化がビジネス成功の鍵として重要視されています。顧客エンゲージメントを維持・強化するためには、パーソナライズされた情報発信を行うための双方向的なコミュニケーション手段が必要です。
そんな中、ChatGPTをはじめとした生成AIと連携した「生成AIボット」を活用した新しいLINEマーケティングが、にわかに注目を集めているのです。
この記事では、生成AIを活用したLINEマーケティングの特徴と具体的な活用法をご紹介します。
目次
◇LINEマーケティングの特徴
「LINE」は日本を中心に圧倒的な普及率を誇るメッセージアプリであり、LINEをマーケティングツールとして考えた場合、その利用者数の多さは企業にとって大きなメリットです。また、若いユーザーを中心に気軽に利用するツールであることから送信したメッセージの開封率がメールよりも高い、といったメリットもあります。
LINEマーケティングを行う際は、LINEヤフー株式会社から提供されている「LINE公式アカウント」という事業者向けサービスを利用する方法が一般的です。事業者はこのサービスを利用してブランドや店舗の公式アカウントを設立することで、LINE上で「友だち」になった顧客へ向けて情報を発信することが可能となります。
一方、従来のLINEマーケティングには課題もあります。
LINEマーケティングの課題①:直接の購買行動につながりにくい
まず、多くのユーザーにとってLINEは個人間の連絡用ツールであり、買い物をしたり企業の情報を収集するためのアプリとは認識されていません。そのため、ただ情報発信するだけでは購買行動につながりにくく、予約受付やクーポン配信など、ユーザーにとっての明確なメリットがなければ、接点の獲得(LINEアプリにおける友だち追加)に至りません。
LINEマーケティングの課題②:興味を引くコンテンツの作成が難しい
若い世代を中心に、LINEでは短く端的なメッセージのやり取りを行うのが一般的です。そのため長文での一括送信のような情報発信は、顧客の興味を引きづらい可能性があります。かといって、担当者が顧客一人一人と細かくメッセージのやり取りを行うのは大変な手間であり、顧客数が増えれば増えるほど大きなコストがかかります。
さらに、顧客の関心が低い情報を頻繁に送信してしまうと、簡単にブロックされてしまう懸念もあり、一度ブロックされた顧客と再び接点を持つのは非常に困難です。ターゲットの興味を引く情報を発信し続ける難しさも、大きな課題といえるでしょう。
◇LINEマーケティング×生成AI
生成AIボットとは、ChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)と連携し、テキスト解析・生成が可能なAIチャットボットのことです。この生成AIボットを「LINE公式アカウント」と組み合わせることで、極めて効果の高いマーケティング活動を行うことが可能となります。
◆生成AIボットでできること
生成AIボットの最大の特長は、ユーザーからの問いかけ(入力)に対し、その都度適切な文章を生成して回答を行う点です。
シナリオ型など従来のチャットボットは、あらかじめ想定された質問にしか答えることができませんが、生成AIボットはユーザーからの入力テキストを解析し、リアルタイムで回答テキストを生成します。つまり、一問一答のような機械的な情報提供ではなく、人間同士の対話に近い双方向的なコミュニケーションが可能なのです。
また、顧客からの質問や要求に対して回答するため、必然的に顧客ニーズに関連した情報を提供できる可能性が高くなります。さらに生成AIボットは24時間365日、ユーザーが納得するまでやり取りを重ねることができるため、顧客エンゲージメントの強化が期待できるのです。
◆生成AIサービス利用時の注意点
ただし、生成AIを利用したサービスには、情報の正確性やデータプライバシーに関する課題も存在します。LINEマーケティングに生成AIボットを利用する際には、それらの課題を認識し、適切に対処しているサービスを選ぶことが重要です。
LLMのビジネス利用におけるセキュリティ上の懸念と対策については、こちらの記事をご覧ください。
◇生成AIボットを利用する方法
生成AIボットを利用する方法はいくつかあり、OpenAIやMicrosoftから提供されているAPIを利用すれば、事業者自らがオリジナルのチャットボットを構築することが可能です。またOpenAIからはChatGPTの事業者向けプランが提供されている他、ChatGPTと連携したサービスも数多く存在します。ただし、現状ではLINEと連携しているサービスは限られています。生成AI系のサービスを利用する際は、そのサービスがLINEなどのプラットフォームに対応しているかどうか、確認することが重要です。
◆生成AIボットの仕組み
生成AIボットは膨大なデータを使ってトレーニングされたChatGPTなどのLLMと連携し、独自の学習データに基づいたテキストの生成を行うことができるAIツールです。従来のチャットボットと違ってシナリオなどを作成する必要がなく、ウェブサイト上などにある既存のデータを読み込ませるだけで、特定の分野(企業情報など)に特化したAIチャットボットを構築することができます。
生成AIボットの機能について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
◇「LINE×生成AIボット」活用法5選
ここからは、LINEマーケティングへの生成AIボット導入で実現可能なマーケティング手法を、いくつか紹介します。
◆問い合わせ対応の自動化
LINEの事業者向けサービス「LINE公式アカウント」には、従来のシナリオ型チャットボットに相当する「応答メッセージ」という機能があります。これはユーザーが特定のキーワードを入力した際に、それに紐づくメッセージを自動的に送信する機能です。あらかじめ、入力が想定されるキーワードとメッセージの組み合わせを登録しておく必要があり、登録のないキーワードには適切なメッセージを返すことはできません。より多様なユーザーからのアクションに応えようとすれば、それだけ多くのキーワードとメッセージを登録しておく必要があります。
一方で、生成AIボットはユーザーの入力テキストに対する回答をその都度生成します。そのためキーワードやメッセージの登録が不要で、非常に手軽に問い合わせ対応を自動化できます。
また、非AIのチャットボットでは想定外の質問には答えられず、それがユーザーにとってストレスになる場面が多くありますが、生成AIボットならユーザーのどんな入力にも自然な返答を行うことができるため、ユーザビリティの高い体験を提供できます。
◆来店予約、在庫確認の効率化
LINE公式アカウントを使った予約管理や在庫確認は、LINEマーケティングの一般的な手法となっています。
担当者が直接顧客とメッセージのやり取りをして予約を取ったり、商品の在庫状況を伝えることも可能ですが、その方法には「利用者が増えるほど対応コストがかさんでしまう」という課題があります。また、営業時間外での予約や問い合わせには即座に対応できず、機会損失につながってしまうという懸念もあるでしょう。
ここに生成AIボットを導入することで、24時間365日ユーザーからの問い合わせに対応することができます。外部の管理システムと連携することで、リアルタイムで予約の空き状況や商品の在庫状況を提示したり、予約受付やクーポン提示など店舗誘導の施策も、ユーザーとの対話的なコミュニケーションの中で実現することができるようになります。
◆店舗接客の効率化
生成AIボットは店舗接客の効率化にも効果を発揮する可能性を秘めています。
顧客が店舗を訪れる前からLINE上で質問や相談ができるため、来店時によりスムーズなサービス提供が可能となるのです。たとえば美容室の場合、生成AIボットがLINE上で顧客の望むヘアスタイルやサービスをヒアリングしておくことで、店舗での聞き取りの手間が削減され、スムーズにサービスを提供できるようになります。これにより顧客満足度の向上と共に、人手不足の解消や回転率の向上が期待できます。
◆対話型アンケートの実施
あらゆるビジネスにおいて顧客の声を聞くことは重要ですが、従来のアンケート調査では顧客からの率直な意見を引き出すことが難しい場面もありました。なぜなら、顧客は企業が想定した質問項目に沿って回答するため、企業側が想定していない顧客の本音を引き出す術がなかったのです。対話形式で顧客とやり取りを行う生成AIボットなら、従来のアンケートでは取得できなかった顧客の本音が得られる可能性があります。
また、対話形式の利点は質問に対する回答だけでなく、会話の流れの中で何気なくこぼれた本音も拾うことができる点です。顧客と生成AIボットの会話履歴から、事業者側が想定していなかった顧客ニーズに気づくことができるかもしれません。
ただし、こうした活用法を実現するためにはそのための機能が必要です。ユーザーとの会話ログを確認・分析する機能があるかどうか、という点も生成AIサービスを選ぶ上で重要な指標となるでしょう。
◆キャラクターを活用した顧客とのコミュニケーション
生成AIボットにキャラクターの特徴を反映することで、顧客の感情に訴えかけるコミュニケーションが可能となります。LINEは多くのユーザーにとって気軽なコミュニケーションを行うツールであり、その中で魅力的なキャラクターと自然な会話を行うことができれば、企業・顧客間の心理的距離を縮める効果が期待できます。企業にとってはブランドロイヤルティを高め、顧客のファン化を図ることができる有益な施策となり得るのです。
もちろん、このようなキャラクターを活用した顧客へのアプローチは、上述した他のマーケティング施策と同時に行うことが可能です。問い合わせ対応や予約受付、来店前のヒアリング、来店後のアンケートなどを、親しみやすいキャラクターが一貫してサポートすることで、効果的に顧客エンゲージメントの強化を図ることができるでしょう。
◇生成AI利用で広がるマーケティングの可能性
ここまで述べたような生成AIを活用したマーケティング手法が、今後どんどん一般的になっていくでしょう。LINEマーケティングだけでなく、他のSNSやアプリ、Webサイトを用いたマーケティング活動も、生成AIの活用によって従来よりも効果的、効率的に運用できる可能性があります。
しかし、生成AIを使ったシステムならなんでもできるかというと、そうではありません。まず、自分たちが持つチャネルと連携可能な生成AIツールを選ぶことが重要です。当然ながらLINEマーケティングに生成AIを活用したい場合、LINEアプリ上で動作する生成AIボットを導入しなければなりません。さらに、顧客の声を詳細に把握したい場合は、顧客との会話ログを閲覧・分析できる機能なども必要となります。そうした要件を満たすツールやサービスを導入することが効果的な顧客マーケティングを実現するカギとなるでしょう。
◆LINEマーケティングに活用可能な生成AIツール
SELF株式会社(弊社)が提供する「SELFBOT」はLINEアプリ上でも利用可能な生成AIボットです。指定したWebサイトなどのデータを自動で学習し、簡単にオリジナルの生成AIボットを構築できます。構築したボットはWebサイトのほか、LINEなどのアプリ上でも動作し、複数のボットを同時に運用することも可能。さらに、専用の管理画面から簡単にボットを管理できる他、ユーザーとの会話ログの閲覧などの機能も備えています。
SELFBOTについて、より詳しい情報は下記のページをご覧ください。
SELFのライターを中心に構成されているチーム。対話型エンジン「コミュニケーションAI」の導入によるメリットをはじめ、各業界における弊社サービスの活用事例などを紹介している。その他、SELFで一緒に働いてくれる仲間を随時募集中。