近年、ChatGPTやClaudeなどの生成AI(大規模言語モデル)が急速に広がっていますが、「実際に、AIは誰が何に使っているのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
そんな疑問に答える研究が発表されました。Anthropic社の生成AI「Claude」に寄せられた400万件超の会話ログを分析し、どんなタスクに使われているのかを明らかにした、大規模な実証研究です。企業へのアンケートなどによる利用実態調査は多数ありますが、実際に公開されている生成AIモデルの利用データを分析した大規模な実証研究は世界初とされています。
本記事では、その研究の要点とともに、AIがどのような職種やスキルに関与しているか、そして私たちの仕事や働き方にどんな影響を与えつつあるのかを、図表を交えてわかりやすく解説します。
また、日本の企業における生成AIの活用状況を示す最新の調査結果もご紹介します。
目次
◇AIがもっとも利用されている職種・業務は?
研究によると、最も頻繁にAI(Claude)が使用された職種は、コンピュータや数理系の職種で全体の約37%を占めています。個別のタスクとしてはプログラミング、デバッグ、コードレビューなど、エンジニア業務が中心となっています。
次いで、アート・デザイン・メディア関連のタスクが10.3%と続いており、テクニカルライティングやコピーライティングなどの用途に多く利用されていることが示されています。また、教育や図書関連の利用も上位に入っており、研究や教材作成に利用されています。
一方で医療/福祉や農業・漁業・林業・建設業などの物理的な作業が伴う職種でのAI利用は1%未満と、非常に少ないことが示されています。
・コンピュータ・数理系:37.2%
・アート・デザイン・メディア:10.3%
・教育・図書館:約9%
・ビジネス/管理系職種:約8%
・医療/福祉・物理作業系職種:1%未満

◇業務への影響度は?
今回の研究結果には、AIが使われている職種において、業務のどの程度の範囲にAIが利用されているかも示されています。それによると、業務の1/4以上にAIを利用している職種は全体の約36%とされています。一方で、業務の3/4以上にAIを利用している職種は、わずか4%となっています。
これは、現状、多くの職種において一部のタスクにのみAIが利用されており、業務上の広い範囲でAIを利用している職種は圧倒的に少ないということを示しています。

AIの業務活用は急速に普及しつつありますが、その活用範囲は限定的であり、業務全体を自動化したり、効率化するには至っていないことがわかります。
◆AIに期待されているスキル
AIが利用されているタスクに関連するスキルも示されています。AIとの会話で最も多く関連づけられたスキルは、批判的思考、傾聴、読解力、ライティングなどの認知スキルでした。対照的に、機械の修理などの技術や、交渉、チームマネジメントなどの対人的スキルでは、AIはほとんど使われていませんでした。

◇AI利用と年収の関係
この研究では、AIの利用と利用者の年収の相関についても興味深い結果が示されています。
AIの利用率は、中〜高所得の職業(例:IT関連職など)で最も高くなっていますが、最上位の高所得層(医師、弁護士など)では比較的低くなっています。さらに、もっとも低所得の職業(例:飲食業)でも低い割合を示しています。
つまり所得が最も高い職種と最も低い職種においてはAI利用が少なく、その中間層では多いという結果です。
◇「AIに任せる」か「AIと一緒にやる」か
Claudeの会話分析から、AIの使い方は大きく2タイプに分類されました。
- 自動化(43%):単純指示+即回答(例:「このデータをグラフにして」)
- 補完(57%):AIとの対話で徐々に完成(例:「もっと説得力ある説明文にして」)
利用者はAIを「一緒に考える相棒」として使う傾向が強く、例として「アイデアをブラッシュアップして」「回答の正しさを確認して」といったやり取りが見られました。
一方で「指示を出して即座に出力を得る」ような使い方も一定数存在します。データをもとにグラフを出力したり、外国語の文章を翻訳したりという利用法があたります。
現状、AIは自動化と補助の両面で利用されていると言えるでしょう。
◇日本での生成AI活用状況は?
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(略称:JUAS)が行った調査によると、東証一部上場企業とそれに準じる企業981社のうち、言語系生成AIを導入している企業は全体の41.2%でした。前年度の26.9%から大幅に増加しており、日本企業でも生成AIの導入が進んでいることがわかります。
◆業種別の利用動向
業種グループ別の動向調査では、すべてのグループで導入済み〜導入準備中の割合が増加しており、あらゆる業種で生成AIの活用が進んでいることが窺えます。

◆AI導入は大企業が主導
同調査によると、売上が1兆円規模の大企業では約7割の企業が生成AIを導入しており、「試験導入中・導入準備中」を合わせると約9割と、ほとんどの企業が少なくとも導入の準備段階に至っているようです。

◆導入企業の7割で「効果あり」
生成AIの導入効果については「期待を大きく超える効果があった」、「概ね想定どおりの効果であった」、「期待値には至っていないが一定の効果はあった」を合わせると73.2%となり、生成AIを導入した企業の約7割が、何らかの効果を感じているようです。

一方で、AIの効果測定について約6割の企業が「効果測定は行っていない」と回答しています。
多くの企業がAI導入に何らかの効果を感じてはいるものの、明確な効果測定には至っていないことが窺えます。
◇今後のAI活用に期待されるもの
企業がAIを活用する際、まず大切なのは「目的を明確にすること」です。AIを導入する目的がはっきりしていないと、期待する結果を得るのが難しくなります。次に、適切なAI技術を選び、それを自社の業務に合った形でカスタマイズすることが重要です。自社のニーズに最適なAIを選ばなければ、効果が薄れてしまいます。
今回ご紹介したAnthropic社の研究結果は、大規模言語モデルが実際どのように利用されているかを示す貴重な統計結果と言えるでしょう。こうした研究や調査で得られたデータをもとに、企業はAI活用の方向性を検討し、AIが自社の業務にどのような影響を及ぼすかを精査する必要があるでしょう。
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