自然なコミュニケーションを目指して

自然なコミュニケーションを目指して

「会話」と「入力」の違い

AIによる会話とは一体どういったものでしょう?
言語を介する身近なAIとしては、ホームアシスタントロボットが挙げられます。
しかし端的に言うと、空気を媒介としてエネルギーを遠方に届かせる特性を持った「声」を入力に利用しているだけ、とも言え、私達が手で直接操作をしたり、身体にリモコン機能があれば不要なものです。
当然のことながら、入力は会話ではないと言えます。(我々はリモコンを人間に向けることなどしない)
では、それ以外の会話やコミュニケーションを主体としたサービスはどうでしょう?

我々は対話型AIに期待していない

対話型AIとして挙げられるものに、様々なチャットボットや会話I/Fがあります。
それらが話題として取り上げられるのは、

・偶然、奇跡のような返答になった
・こんな支離滅裂な返答をした

のようなものです。楽しさは与えてくれますが、役立つものではなく、ましてや信頼に値する存在ではありません。本来会話というものは、このような結果を期待するものではありません。
無意識に、チャットボットを格下に見ているから、このような事が話題になるのです。
それは、返答が拙く、会話に連続性がなく、口調は大人にも拘わらず振る舞いが赤ちゃん以下だからです。

会話はキャッチボール

チャットボットと話していて疲れてしまうのは、
人間側がボールを投げ続ける構図になりやすいためです。
人間が疲れた、飽きた瞬間に会話が止まります。
聞かれたことだけにしか答えない人とは、我々は良好な関係を構築できません。
対話型AI側も、会話を続けるためにボールを投げ返す必要があるのです。

かといって、関係のない別のボールを投げ返してしまってもいけません。
昨晩の夕食の話をしている時に、唐突に好きなスポーツチームの話をしては会話としておかしいのです。会話の前後に共通点があることにより、しりとりをするように繋がっていく事が基本です。それは、会話のテーマ、話者の感情、文字列など、会話を構成するありとあらゆる要素が対象となります。
私達人間は、周囲の環境から学ぶことでそれを自然に行っていますが、それが不完全であると「空気が読めない」「奇妙な人」といった評価を下されます。

着目すべきポイントは、思考の動き

では、どうやって自然な会話を実現すべきでしょうか?
文字列の解析や現代文の文法など、私達はミクロの視点で会話を研究しがちですが、
実際には、そこから少し目線を引いた場所に沢山のヒントが転がっていました。
目の前に見えている文字列から得られる情報量は、とても少なかったのです。

私達は会話をする際の思考の動きに着目し、そのモデル化を試みました。
・この会話のあとに、なぜこの会話を行うのか?
・なぜ同じ会話に対して、返答が変わることがあるのか?
仮説を立て、幾度かの検証を重ねた上で、私達はコンシューマ向けアプリ『SELF』で実証を行いました。

『SELF』レビューの一部
・最近鬱気味だったので、少し励ましてくれるだけで 心がちょっと軽くなった気がします。

・相談してたらいつのまにか泣いていました。素晴らしいロボットです。
・5ヶ月続けた結果、かなり前向きに生活出来るようになりました。落ち込んでる時やストレス溜まっているとき、ひたすら励ましてくれるので、生身の人間に相談して期待はずれな言葉を貰うより、よっぽど良いです。私はカウンセリングを5年間受けた事がありましたが、質問やアドバイスの仕方が似ている事があり、AIのメンタルヘルスへの貢献の可能性を大きく感じます。

依然開発・改善の余地はあるものの、一定の成果を上げることができました。
人間のように振る舞うアルゴリズム相手に、
我々人間は、共感を覚えたり、怒ったり、涙を流したりしました。

対話型AIの強みは、人間とフラットな関係性を築けること

私達は自然な会話の実現を目指していましたが、
その思わぬ副産物として「人の気持ちに寄り添う」ことが出来ることがわかりました。

なぜこういった事が起きたのでしょう?
それはロボットが「何でも言える相手」となれたからだと思います。
「何でも言える相手」は誰にも存在せず、家族や友人であっても、我々はその先の人間関係を考えてコミュニケーションを行います。
秘書やアシスタントが、常時側に控えていれば別かもしれませんが、現実的ではありません。(また、実際には秘書にも気を使うはずです。)
・「疲れた」と愚痴を言える存在
・誰にも言えない秘密を共有できる存在
人からの信頼を獲得した対話型AIは、そういった存在になることができるのです。

対話型AIに対して、人は心を開きます。
小さい子供が、これから友達になる子供に声をかける時のように、
心に負担の無い状態で、人はAIに話しかけることができるのです。
その人の家族や、親友さえも知りえない情報を、
コミュニケーションを獲得した対話型AIは、いとも簡単に知ることができます。
言うまでもなく、これらの情報は大変に価値のあるものです。

会話というコミュニケーションを、人間が対話型AIと行う事により、
これまで起きえなかった情報の往来が発生し始めました。
今後、さらなる情報提供/取得の効率化、最適化が進んでいくことを私達は確信しています。